ニューヨークの街並み。ニューヨーク州政府は、データセンター受入地域への投資について、電力需要1MW当たり100万ドルを推奨ベンチマークとする新たな指針を発表した。データセンターに伴う電力インフラ費用から一般の電力利用者を保護する制度整備も進めている。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
米ニューヨーク州政府は9月15日、データセンター受入地域への指針「Host Community Investment Framework」を発表しました。州がデータセンター開発の一時的なモラトリアムを実施する中、1メガワット当たり100万ドルの地域投資を推奨ベンチマークとして示し、開発再開後を見据えた利益還元の交渉指針とします。また、インフラ費用が一般利用者の電気料金へ転嫁されるのを抑える制度整備も推進中です。同様の課題は日本でも表面化しており、東京電力パワーグリッド管内で系統への申込みが累計約1200万kWに達する中、経済産業省が上位系統の費用負担のあり方を含めた検討を進めています。
本文
米ニューヨーク州政府は2026年9月15日、大容量電力を消費するデータセンター開発を受け入れる自治体や地域社会に向けた新たな指針「Host Community Investment Framework」を発表しました。
ニューヨーク州は州知事令に基づき、データセンター開発の一時的なモラトリアムを実施しています。環境基準等の整備を経て開発が再開された段階を見据え、立地地域への利益還元やインフラ費用の負担ルールづくりを先行して進める方針です。
今回打ち出された枠組みは、データセンターを受け入れる自治体が事業者と交渉する際、地域への還元策を組み込めるよう示した任意の指針です。指針では、立地地域への投資の推奨ベンチマークとして、データセンターの電力需要1メガワット(MW)当たり100万ドル(受入規模が50MWの施設であれば5000万ドル相当)を例示しています。還元対象には道路・上下水道、公共交通、住宅、職業訓練、学校・保育施設、ブロードバンド、中小企業支援などが挙げられています。ただし、本枠組みは法的義務や一律の課徴金ではなく、地域と事業者が投資時期や形態を決定するための協議指針となります。
併せてニューヨーク州では、この自治体向け指針とは別に、州公共サービス局(DPS)を通じて一般の電力利用者を保護する制度整備も進められています。データセンター向けに必要となる電力インフラの費用が一般家庭や企業の電気料金へ転嫁されることを抑えるため、データセンター側の費用負担のあり方などについて制度整備が進められています。
■東電PG管内で系統接続の託送申込みが累計約1200万kW
データセンター建設に伴う電力インフラの費用負担という共通の課題は、日本国内においても顕著になっています。
経済産業省・資源エネルギー庁の資料によると、日本国内でも生成AIやクラウド需要の増加を背景に、データセンター事業者からの電力系統への接続申請が急増しています。首都圏をカバーする東京電力パワーグリッド(東電PG)管内では、データセンター事業者による系統への託送申込み容量が2025年3月末時点の累計で約1200万キロワット(kW)に達しました。系統接続に関する問い合わせ件数も、2018年の171件から2024年には1388件へと大幅に増加しています。
特に千葉県の印西・白井エリアなど一部の特定地域では、送電網の供給可能量を超える接続申込みが集中する傾向がみられます。送配電設備の増強や建設には多額の資金と長期の歳月を要するため、既存インフラの効率的な活用が課題となっています。
■日本でも「上位系統の費用負担のあり方」を審議会で検討
費用負担の側面においても、日本国内で既存ルールの見直しに向けた議論が行われています。
日本の電力制度では従来、基幹となる「上位系統」の整備費用について、広く地域全体に便益が及ぶという前提に基づき、全額一般負担として処理されてきました。しかし、データセンターなど局所的な巨大電力需要によって上位系統の大型補強が必要になる事例が増加したことを受け、経済産業省の審議会では需要家間の公平性を担保する観点から「上位系統の費用負担の在り方」についての検討が進められています。審議会では、大規模需要家に一定の費用負担を求める考え方や契約上の費用回収メカニズムなど様々な意見が出されていますが、現段階では検討・議論の過程にあります。
■電力と通信の一体誘導「ワット・ビット連携」を推進
なお、政策の具体的なアプローチにおいては日本独自の施策も進められています。
日本政府は電力インフラの余裕と通信網を一体で評価して立地を適正化する「ワット・ビット連携」を推進しています。国内データセンターは2023年時点で設置面積ベースの約90%が東京圏と大阪圏に集中しているため、電力系統の負荷軽減や災害時の分散化を図り、地方への立地誘導を目指しています。また、2026年4月からは省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター向けの追加措置が施行され、2026年度提出分から一定規模以上の事業者の定期報告にデータセンターに関する項目が追加されています。
生成AIの普及などを背景にデータセンターの電力需要が拡大する中、それを支える電力インフラの費用を「誰が負担するのか」という問題は、ニューヨーク州と日本の双方で政策上の論点となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













