日本は何を狙う? エネルギー・AI・グローバルサウス、「進化したFOIP」の経済戦略

2026年09月22日 10:25

画・ロシア制裁、西側経済に大打撃、25兆円喪失。日本は3兆円超。代替対応が急務。

高市総理は、「進化したFOIP(自由で開かれたインド太平洋)」の下で、エネルギーを始めとするサプライチェーンの強靱化、グローバルサウスとの連携、AIなど技術革新に伴う課題への対応を進める方針を示している。政府資料では、国内の製造能力確保と海外での代替的な製造基盤の構築を組み合わせる「新たな戦略的国際分業」も打ち出されている。(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

高市総理は9月21日、国連総会出席のため米国へ出発する際、日本の国連加盟70周年を踏まえた一般討論演説において、「進化したFOIP(自由で開かれたインド太平洋)」の下でエネルギーを始めとするサプライチェーンの強靱化、グローバルサウスとの連携、AIなどの技術革新に伴う課題対応に日本がリーダーシップを発揮する決意を示したいと述べました。一般討論演説の内容やトランプ米大統領との日米首脳会談はこの時点で最終調整中とされています。

本文
 高市総理が9月21日の渡米前会見で言及した「エネルギー供給網」「グローバルサウス」「AI」という3つの軸は、政府がこれまで「進化したFOIP」や経済安全保障政策の下で具体化してきた取り組みと重なります。官邸や経済産業省がこれまでに公表してきた各種資料を横断的に整理・分析すると、日本が国内回帰のみに依存せず、インド太平洋諸国と資源・製造・技術基盤を相互に組み合わせることで、自律性と強靱性を高めようとする戦略構造が見えてきます。

 まず「サプライチェーン強靱化」の側面では、経済産業省がまとめた「新たな戦略的国際分業の推進」方針において、経済安全保障の観点から国内に必要な製造能力を確保しつつも、「国内だけで全ての製造能力を確保することは非現実的」であると明記されています。その上で、産業の工程や各国・地域の強み、課題に応じて国際分業を進め、コモディティー化した製品分野などでは海外に代替的な製造基盤を戦略的に構築する方向性が打ち出されています。

 エネルギー分野においては、政府は4月に「パワー・アジア」構想を打ち出し、高市総理は7月の会見でこれを「進化したFOIP」の具体化第一号と位置付けました。これは日本一国での備蓄や調達にとどまらず、インド太平洋諸国と原油等の調達やサプライチェーン維持で協力し、アジア地域全体での原油備蓄・放出システムの構築やエネルギー源の多様化を進める取り組みです。重要鉱物についても、高市総理は7月の会見で、G7サミットにおいて「重要鉱物の共同備蓄」で連携していくことなどを確認したと説明しています。

 「グローバルサウスとの連携」に関しても、単なる途上国支援枠組みではなく、相互の経済的利益に直結する施策として運用されています。経産省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業」では、現地でのDX・GXといった課題解決に加え、日本企業の新市場開拓、特定国への依存低減、サプライチェーン強靱化を同時達成することが目的に掲げられています。実証段階では、ザンビア・コンゴ民主共和国でのドローンを活用した重要鉱山遠隔監視の実証事業や、タイでの半導体高機能化学品材料の供給多角化に向けた調査事業、東南アジア5カ国を対象とする船舶向け自律航行AIシステムの導入可能性調査など、重要鉱物・半導体材料・AI関連の具体案件がすでに採択されています。

 「AI・技術革新」においては、モデル開発のみならず、通信・データインフラの共同構築まで視野に入れた「FOIPデジタル回廊構想」が提示されています。海底ケーブル、オープンRAN、衛星通信、オール光ネットワークなどを通じて、インド太平洋域内におけるデジタル基盤の整備が目指されています。さらに経産省の「Run Faster」戦略では、AI、量子、バイオ、宇宙等の重点分野において、海外依存を低減する「自律性」と、他国にとって日本の産業・技術基盤が欠かせなくなる「不可欠性」を相互に高めるパートナーシップ構築が掲げられています。

 一連の政府公表資料を俯瞰すると、国内への製造能力残置と海外での代替基盤構築の組み合わせ、資源・技術の多角化、市場開拓と供給網強化の統合という方針が確認できます。9月21日に高市総理が挙げた政策課題は、これまで政府が「進化したFOIP」の下で具体化してきた取り組みと連続しており、一般討論演説でこうした取り組みについて日本のリーダーシップを発揮する決意を表明したいとの考えを示しました。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)