「自分への投資」という呪縛。リスキリングの波で、私たちが失いかけているもの

2026年02月28日 20:24

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実は「学んでも不安」が7割。リスキリング白書が示す、2026年の自己研鑽疲れ

今回のニュースのポイント

・リスキリング(学び直し)市場の拡大により、個人のスキルアップが「権利」から、生き残るための「義務」へと変質しつつあります。

・「リスキリング白書2025」によれば、自己研鑽に励む層の約7割が「どれだけ学んでも安心できない」と回答しており、不安の無限ループが発生しています。

・金融広報中央委員会の調査でも示された「知識を得るほど不安が募る」という傾向が、キャリア形成の分野でも鮮明になっています。

 「今のスキルのままでは、5年後は生き残れない」。そんな言葉が、駅の広告やSNSのタイムラインに溢れています。リスキリング(学び直し)や副業。かつては前向きな挑戦だったはずの「自分への投資」が、2026年の今、多くの人にとって逃げ場のない「呪縛」へと姿を変えつつあります。学べば学ぶほど、自分の不足している部分が浮き彫りになり、さらなる不安を呼ぶ。そんな皮肉な連鎖が起きています。

 国や企業が個人の自律的なキャリア形成を支援するのは、一見素晴らしいことのように思えます。しかし、その前提には「自分の価値は、常に市場からアップデートし続けなければならない商品である」という論理が隠れています。「リスキリング白書2025」の結果を紐解けば、自己研鑽に励む層の約7割が、学びを継続しているにもかかわらず「将来への不安が消えない」と回答しています。

 金融広報中央委員会の調査が示すように、知識を得るほどに不確実性を意識し、不安が募るという現象は、マネーリテラシーだけでなく、キャリア形成の分野でも鮮明になっています。自己投資という名の「自分磨き」が、実は「今の自分では不十分である」という否定のメッセージを、毎日自分に送り続ける行為になってはいないでしょうか。

 本来、成長とは自身の喜びのためにあるものです。しかし、市場価値や生存戦略といった言葉に飲み込まれ、ありのままの自分を肯定する余裕が失われています。2026年、私たちが本当に投資すべきは、履歴書に書けるスキルだけでなく、どれほど社会が激変しても揺らぐことのない、「自分という存在への信頼」かもしれません。

 何者かにならなければと、背負い込みすぎてはいませんか。資格やスキルがなくても、あなたはすでに十分な価値を持ってここにいます。たまには学びを休み、ただ存在することの心地よさを味わう。そんな「何もしない自分」を肯定する勇気こそが、今の時代を生き抜く本当の力になるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集)