今回のニュースのポイント
ロームが28日に発表した車載48Vシステム向け 80V耐圧MOSFET「AG16xFNxxシリーズ」の製品化は、自動車が巨大電子機器へと変貌する産業構造の変化を象徴しています。多機能化に伴う車内の電力消費爆発に対応するため、従来の12Vシステムから高効率な48Vシステムへの移行が急務となる中、高放熱と高信頼性を両立する最新デバイスを投入。電力制御能力がクルマの新たな競争軸となる現状を解説します。
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ロームが28日に発表した、車載48V電源システム向けの80V耐圧MOSFET「AG16xFNxxシリーズ」の製品化は、一見すると車載半導体市場における定期的なラインアップ拡充や、特定デバイスの世代更新を伝える個別部品の技術ニュースに見えます。しかし、その技術的なアプローチと背景にある市場ニーズを見ていきますと、これまでの自動車産業を形作ってきた機械部品中心の設計思想を脱し、走行機能を備えた巨大な電子機器へと変わりつつある現代の自動車が直面する、車内電力需要の急増という構造課題に対する現実的な方向性が見えてきます。
今回製品化された最新デバイスは、同社が展開する車載向けMOSFETブランド「EcoMOS」の最新製品として、小型化と大電流対応、さらには過酷な車載環境に耐えうる高放熱性と高い実装信頼性を同時に具現化しています。これは、自動車が今後、機械的な性能だけでなく、電力をいかに効率的かつ安全に管理できるかという、電力制御の能力によって製品価値が決定される時代に入った事実を示しています。
従来の自動車において、電装部品への給電システムは長年にわたり12V電源システムが主流であり、これまではその給電能力で十分に対応が可能でした。しかし、近年の自動車の進化は、先進運転支援システム(ADAS)の高度化や各種センサーの増設、電動ウォーターポンプや電動制御システムといった駆動系の電動化、さらには車内AIや大型ディスプレイの搭載など、多機能化に伴って消費電力が劇的に増大しています。
こうした電力需要の急激な高まりにより、従来の12Vシステムでは配線の肥大化や発熱の抑制が限界に近づきつつあり、世界の自動車業界では、より少ない電流で大電力を効率よく供給できる48Vシステムへの移行が加速しています。電圧を上げることで電流を4分の1に低減できる48V化は、車体全体の配線軽量化とエネルギー効率向上を両立させるための重要な設計転換となっています。ロームは今回の製品について、市場の本格的な普及期を見据えた重要な戦略デバイスとして位置づけています。
現在の自動車市場における電動化の文脈では、完全な電気自動車(EV)へのシフトばかりが注目されがちですが、実際にはハイブリッド車やマイルドハイブリッド車、さらには高機能なガソリン車にいたるまで、48Vシステムを中心とした電動制御化の流れは全方位で進行しています。つまり、今後の自動車の進化の本質は、単純な「EVかガソリン車か」というパワートレインの二元論ではなく、車体全体の機能をどれだけ高度に電動制御化できるかという競争へと移行しています。
CPUが自動車の脳として機能する一方で、MOSFETのようなパワー半導体は、車内の膨大な電力を各電装部品へと安全に配分する電力の交通整理役を担う最重要部品です。ロームは今回、内部構造に銅クリップボンディングを採用して低抵抗化と放熱性を高めたほか、基板との接合強度を高めるガルウィングリードや、光学検査を容易にするウェッタブルフランク形成技術などを導入し、高い実装信頼性を確保しています。
この自動車の「走るコンピューター」化とも表現できるソフトウェア定義車(SDV)への転換期において、車載半導体の果たす役割はますます重要性を増しています。自動運転支援やOTA(無線によるソフトウェア更新)によって電子制御の領域が広がるほど、車載半導体には性能の高さだけでなく、故障のリスクを極限まで排除した絶対的な安定動作が求められます。
現在、AI処理を担うプロセッサー領域では米国勢が強い存在感を誇っていますが、パワー半導体や高信頼性部品をはじめとする電力を安定供給するための制御技術においては、日本の半導体メーカーが強固な優位性を維持しています。ロームの新型MOSFETの投入は、単なる個別部品の進化にとどまらず、自動車産業の競争軸がエンジン性能から、大量の電力を賢く制御するエレクトロニクス技術へと変化している現状を雄弁に提示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













