なぜ景気は弱いのに賃上げは続くのか 企業と生活のズレ

2026年04月14日 13:33

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景気は悪化見通しなのに賃上げ継続 経営者調査に見る違和感

今回のニュースのポイント

景気判断指数は低下傾向へ:景気判断指数は前回の27.0から24.0へと低下し 、2026年度前半には5.8まで落ち込む大幅な低下が見込まれています 。

賃上げ率は「4.69%」を予測:2026年の賃上げ実施予定企業は89.1%に達し 、賃上げ率は製造業・非製造業ともに加重平均で4.69%となる見通しです 。

設備投資意欲は依然として旺盛:設備投資額を「増額」とする回答が54.5%に増加し 、設備投資DIは前回から上昇して45.4を記録しています 。

労務費の価格転嫁が大きな課題:労務費の転嫁率は製造業で34%、非製造業で49%にとどまり 、賃上げ原資の確保とコスト増の板挟みにあう企業の姿が浮き彫りとなりました 。

 景気は悪化が見込まれている一方で、企業は賃上げや設備投資を続けています。この“ズレ”こそが、日本経済の現在地を象徴しています。

 経済同友会の3月調査によると、景気の現状判断において「拡大」から「後退」の回答率を差し引いた景気判断指数は前回27.0から24.0まで下がっており、拡大感が弱まりつつあります。さらに2026年度前半の先行きについては、指数が5.8まで落ち込むさらなる低下が見込まれています。先行きの判断根拠としては「個人消費の減少」という声が多く 、設備投資は堅調ながらも、内需の弱さが景気の重石になっているとの見方が目立ちます。

 特筆すべきは、景気悪化が懸念されるなかで賃上げが継続されている点です。2026年の賃上げを「実施予定」とする企業は89.1%に上り 、年収ベースの賃上げ率は平均4.69%と高い水準を維持しています。ベースアップ(75.6%)や初任給引き上げ(44.5%)といった賃上げ方法が選ばれている背景には 、人手不足や採用競争の激化があり、「人材確保のために賃金を上げざるを得ない」という企業の切実な状況が伺えます。実際に設備投資の遅れ要因としても「人手不足による工事進捗の遅れ」が挙げられています。

 企業の台所事情は決して楽ではありません。調査では、足元1年間のコスト上昇分のうち販売価格に転嫁できている割合が、ビジネス全体で製造業45%、非製造業52%程度にとどまりました。特に労務費の転嫁については、製造業で34%、非製造業で49%とさらに低い水準となっています。賃上げ率が前年を下回る要因として「価格転嫁が進まず十分な原資を確保できない」ことが挙げられており、コスト増と先行き不安の板挟みという厳しい構図が見て取れます。

 経営者が予想する1年後の物価上昇率は加重平均で2.89%です。賃上げ率の見通し(4.69%)がこの物価上昇率を上回る形になっているため、単純計算では実質賃金がプラスになる可能性もありますが、社会保険料の負担増や度重なる値上げへの警戒感から、家計側には負担感だけが強く残りやすい状況です。今回の調査は、景気の先行きには慎重な見方が広がる中でも、人材確保と将来成長のための賃金引き上げ・設備投資を止めるのは難しいという、企業の厳しいかじ取りの現状を浮き彫りにしています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)