ナフサとは何か 価格上昇が生活コストを押し上げる構造

2026年04月19日 18:08

今回のニュースのポイント

プラスチック原料価格に上昇圧力:ナフサおよびプラスチック原料価格は、中東情勢の緊迫化を背景に上昇基調が続いています。

ホルムズ海峡の通航制限と供給不安:日本のナフサは輸入分の約7割を中東に依存しており、海峡での通航制限の強まりや事実上の封鎖に近い状態との見方も一部で出る中で、供給不足への懸念が顕在化しています。

住宅・建設業界向け建材への波及:断熱材や配管などの価格が大幅に引き上げられています。特定の断熱材や防水材などで、大幅な価格上昇が見込まれるケースもあるとされています。

脆弱な国内在庫の備蓄構造:ナフサの国内在庫はおおむね20日前後とされ、原油に比べて備蓄のバッファーが極めて薄いうえ、原油のような手厚い国家備蓄制度も整っていません。

 「ナフサ」という言葉は、私たちの日常生活で耳にする機会は少ないかもしれません。しかし、今起きているナフサの価格上昇は、食品のパッケージから住宅の配管まで、あらゆる生活コストを押し上げる「素材インフレ」の一因となり得ます。

 ナフサは、原油を蒸留して得られる石油製品の一つで、沸点がおおむね30〜180℃の軽質な炭化水素の混合物です。見た目はガソリンに近い透明な液体ですが、燃料としてではなく、主に化学製品の「原料」として現代社会を支えています。この液体を高温で分解(クラッキング)することで、エチレンやプロピレンといった石油化学の基礎製品が生まれます。これらがさらに加工され、ペットボトル、食品包装、衣料、自動車部品、さらには医療用注射器や点滴チューブといった不可欠な素材へと姿を変えるのです。

 現在、このナフサ価格の上昇圧力が強まっている主な要因の一つは、緊迫する中東情勢にあります。日本はナフサ輸入の約7割を中東に依存しており、国内精製分を含めた全体でも過半を同地域に頼っているのが実情です。米国・イスラエルとイランの対立激化により、世界の要衝であるホルムズ海峡では通航量の減少などを受け、事実上封鎖に近い状態との見方も一部で出ています。原油不足がナフサ不足に直結する懸念から、市場では上昇圧力が強まっており、国内外の化学メーカーは相次いで製品の値上げを発表する事態となっています。

 ナフサには「代替が極めて難しい」という産業構造上の特徴があります。日本の石油化学設備の多くは、ナフサを原料とすることを前提に設計されています。北米などのように天然ガス由来のエタンに切り替えるには、膨大な投資と時間が必要であり、短期的な供給不足を補う手段がほとんどありません。さらに、ナフサの国内在庫は原油に比べて備蓄のバッファーが極めて薄いため、供給ショックに対して極めて影響を受けやすい構造となっています。

 影響はすでに実体経済のあらゆる局面に現れています。プラスチック樹脂の価格上昇は、レジ袋や食品トレイなどの値上げを招き、家計への影響も意識され始めています。特に影響が顕著なのが住宅・建設業界です。断熱材や排水配管などはナフサ由来の素材が多用されており、大幅な価格上昇や供給制約が指摘されています。一部では素材不足による工期遅延の懸念も報じられており、住宅価格をさらに押し上げる要因となっています。

 今後の焦点は、供給の安定化に向けた模索です。経済産業省は中東リスクに対応するため、米国やアジアなど中東以外からのナフサ調達枠を通常の約2倍規模まで拡大する方向で調整するなどの緊急対策を打ち出しています。また、医療用などの重要用途への優先配分も検討課題となっています。中長期的には、植物由来の「バイオナフサ」や廃プラスチックを再資源化した原料など、特定の地域に依存しない「ナフサ脱却」への技術転換が、日本産業の強靭化を左右することになるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)