およそ100億円を投じて大規模な改装を行った伊勢丹新宿本店が6日、グランドオープンした。「世界最高のファッションミュージアム」というコンセプトのもと、装いも新たに生まれ変わった店内は、メンズ・レディスの注目ブランドや人気のセレクトショップが集結する他、「パーク」と呼ばれるプロモーションスペースも新設され、新たなトレンド発信スポットとして注目を集めそうだ。オープニングセレモニーで挨拶した、三越伊勢丹ホールディングス<3099> の大西洋代表取締役社長は「世界一を目指してさらに進化し続けたい」と、百貨店業界におけるリーディングカンパニーとしてのプライドと自信を伺わせるコメントを残している。
もともと、江戸時代に日本橋と甲州(現在の山梨県)を結ぶ甲州街道の宿場町として栄えた新宿三丁目エリアは、現在ではマルイ(丸井グループ<8252>)やH&Mなど若者向けの商用施設が立ち並ぶ一方で、大通りから一本入ったところには昔の名残を感じる老舗店も多く存在しており、時代の最先端と伝統が交差し、幅広い世代の人々が集まってくる人気スポットだ。昨年の9月にはビッグカメラ<3048>とユニクロ(ファーストリテイリング<9983> )という異色のコラボによる「ビックロ」が誕生し、話題となったが、今回のランドマーク的存在でもある伊勢丹新宿本店のリニューアルは、このエリアに新たな活気をもたらすことになりそうだ。
そんな既に都内有数の大商業エリアでもある新宿3丁目だが、この街の持つポテンシャルはこんなものではないようだ。そう考えられている理由は、16日からいよいよ開始される東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転にある。これによって、横浜方面から埼玉の西南部まで一つの路線として結ばれるため、人の流れが変わることで、新たに大きな経済効果が生まれると期待されているのだ。
例えば、横浜方面から都内にショッピングや食事に出かける時に、これまでは大型の商業施設が立ち並ぶターミナル駅の渋谷で用事を済ませる人が多かったと思われる。しかし、今回、副都心線と東横線が直通になってことで、今まで渋谷止まりだった人たちが、少し足を伸ばし新宿三丁目まで訪れるといったケースは増えてくるだろう。そう言った意味でも、副都心線において池袋と渋谷という大きなターミナル駅の中間に位置する新宿三丁目は、埼玉と神奈川の両方面から新たな人の流入が期待できる大きな潜在能力を秘めていると言える。
同時に、生まれ変わった伊勢丹本店をはじめとする新宿三丁目に立ち並ぶ商業施設への顧客の流出を食い止めるためにも、渋谷や池袋の既存の大型商業施設もさらなる戦略を打ち出してくるだろう。今回の副都心線と東横線の直通化や伊勢丹新宿本店のグランドオープンは、新宿、渋谷、池袋という三大商業圏に新たな刺激を与え、その競争から生まれる新しいエネルギーによって、それぞれ街が個性を持ったさらなる魅力的なスポットへと成長していく大きなきっかけにもなりそうだ。そして、より多くの人が足を運ぶようになれば、なかなか財布の紐が堅い消費者のマインドもプラスの方向に導いていくのではないだろうか。(編集担当:北尾準)