朝鮮王朝儀軌など貴重な図書 近く韓国に返還

2010年08月11日 11:00

 菅直人総理は日韓併合条約締結から100年の節目を迎え、10日、総理大臣としての談話を発表するとともに、この談話が戦後賠償の個人請求の問題に影響を与えるものではないとの認識を示した。

 談話は、条約締結により36年に及ぶ日本の韓国植民地支配が始まり、「当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた」とし、「わたしは歴史に対して誠実に向き合いたい。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明したい」と村山内閣に続き、改めて、日本の行為に対し、日本政府として遺憾の意を表明した。

 また、植民地支配下当時に日本が保管することとなった「朝鮮王朝儀軌」など貴重な韓国の図書について、菅総理は「韓国の人々の期待に応え、近くお渡ししたい」と返還の意思を明らかにした。菅総理は「返還」でなく、「渡す」と表現したことについて、「法的に解決済みのことなので」(譲渡するとの表現を使った)としている。

 菅総理は、こうした反省の上に立って、現在の両国間について「日韓両国は、今この21世紀において、民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要で緊密な隣国同士となっている。それは、二国間関係にとどまらず、将来の東アジア共同体の構築をも念頭に置いたこの地域の平和と安定、世界経済の成長と発展、核軍縮や気候変動、貧困や平和構築といった地球規模の課題まで、幅広く地域と世界の平和と繁栄のために協力してリーダーシップを発揮するパートナーの関係」として、「両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない」と未来志向での両国間関係強化に強い思いを発信した。

 仙谷由人官房長官は、この日、菅直人総理から韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領に対して今回の談話に関する考えが説明され、「李大統領からは強い謝意が述べられ、韓国と日本の将来のより強い協力関係を築くことができるとの旨の表明がなされた」と紹介するとともに「特に北東アジアの安定に向けた両国の協力が不可欠との認識で一致した」と語った。
(編集担当:福角忠夫)