新政権でどうかわる わたしたちの暮らしと環境 (3) 地球温暖化対策

2009年09月10日 11:00

 地球温暖化対策が飛躍的に加速

 自公政権から民主・社民・国民新党の連立政権に移行することにより、最も、その方向性を加速、強化させることになったもののひとつが「地球温暖化対策」といえよう。

 新しく誕生する鳩山内閣は「雇用と環境を柱に、人を大事にする新しい経済を実現する」(民主党マニフェストから)ことを雇用対策や経済対策推進の基軸にすえることになる。

 そして、今月7日、都内で開かれた「朝日地球環境フォーラム2009」でのスピーチでも「地球温暖化対策」に対する公約実現に向けて強い意思表明を行った。

 「(CO2排出量を)2020年までに1990年比で25%の削減をめざす」と明言。「政治の意思として、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく」と語った。麻生総理が目指した1990年比8%削減に比べ、格段に、環境重視の政策転換にみえる。先進国としての自覚を世界にアピールする機会になった。CO2削減に努める途上国への技術的支援や資金的支援についても新内閣の下で直ちに検討していく、考えも明らかにしている。

 国際機関で評価する声が報道される一方で、国内経済界からは「とてもじゃないが、(企業活動が)成り立たない」「海外に出て行く企業が増える」と批判的な声があがっている。しかし、これは、選挙公約にあがっていたことで、急に浮上したものではない。民主・社民・国民新党による新政権を誕生させた国民の意思として、官民国民一体となって努力することが求められている。

 1990年比25%削減はNHK報道によると「大阪万博が開催された頃の(CO2)排出量になる」らしい。

 実現可能な目標なのか、と感じてしまうが、独立行政法人国立環境研究所と京都大学・立命館大学・みずほ情報総研による2050年日本低炭素社会シナリオチームが環境省「地球環境研究総合推進費戦略研究開発プロジェクト」、日英共同研究「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」として研究し、昨年5月にまとめた「低炭素社会に向けた12の方策」では、2050年に1990年比でCO2排出量70%削減への12の方策が提案されている。

 そこでは、2050年に想定されるサービス需要を満足させながら、70%を削減する技術的なポテンシャルがあり、「政府が強いリーダーシップを持って、低炭素社会の目標共有、総合施策・長期計画の確立、産業構造転換や社会資本整備を積極的に進め、省エネルギー技術の利用・低炭素エネルギー開発投資を加速し、民間投資を誘導すること」ができれば可能という。

 もちろん、エネルギー需要側の削減努力が最も重要になる。分野別の削減分担として「産業で13%から15%、民生で21%から24%、運輸で19%から20%、エネルギー転換で35%から41%」をあげる。

 シナリオチームによると、2050年には日本人1人あたりのGDPは2000年比で2・7倍から1・6倍になるが、人口は0・74倍から0・8倍に減少すると想定している。

 経済成長や世帯あたりのサービス需要の増加などがCO2を増加させる一方で、世帯数の減少や産業構造の変化(サービス化)、輸送需要の減少などがCO2減少の要因にもなる、など活動量の変化もふまえた提言になっている。

 骨格をみると、民生分野では建物構造を工夫することにより、光を取り込み暖房・冷房の熱を逃さない建築物の普及を図るなど「快適さを逃さない住まいとオフィスの実現」、産業分野では露地で栽培された農作物など旬のものを食べる生活スタイルで「農作物の旬産旬消による低炭素化」を図る。建築物や家具などに木材を積極使用し、林業ビジネスを伸展させる「森林と共有できる暮らし」の実現。

 また、消費者のほしい低炭素型製品やサービスの開発、販売など「人と地球に責任を持つ産業・ビジネス」の実現。商業施設や仕事場に徒歩や自転車・公共交通機関で行きやすい街づくりを行う「歩いて暮らせる街づくり」、太陽エネルギー、風力、地熱、バイオマスなどの地域エネルギーを最大限に活用する「太陽と風の地産地消」、水素・バイオ燃料に関する研究開発の推進と供給体制の確立を図る「次世代エネルギーの供給」、CO2排出量の見える化で消費者の経済合理的な低炭素商品選択をサポートする「見える化で賢い選択」、材料の供給者と製造者、卸売、小売、顧客を結ぶ供給連鎖管理によるサービスの効率化で無駄な生産や在庫を削減するなどをあげ、最後に「低炭素社会を設計し、実現させる、そしてそれを支える人づくりを行う」ことをあげる。

 民主党はマニフェストで「2050年までのできるだけ早い時期に1990年比で60%超の温室効果ガス排出量削減を目指す」と明記していた。2020年までの25%削減はその第1歩となる。

 今後は、具体化のための鳩山内閣の政策と民主党があげる「国内排出量取引市場の創設」や「特定の産業に過度の負担とならないように留意しながら創設したい」としている「地球温暖化対策税」が近々関心を呼ぶことになりそうだ。

 また、今月22日の国連気候変動問題首脳級会合に出席する鳩山新総理が、国際の舞台で、どこまで踏み込んだ提案や考えを表明するのか、財界も国民も注視している。
(編集担当:福角忠夫)