2011年 どうする地デジ難民問題?

2009年04月09日 11:00

 2011年の地上デジタル放送完全移行まであと2年余となった。テレビのアナログ放送が消える同年7月までに出荷済みの地デジ対応受信機は8000万台前後と予想されているが、それでも700万所帯のテレビがアナログのまま残ってしまうという見方もある。政府もさまざまな対策を考えているようだが、このままでは最終的に、約400万所帯の地デジ難民を生み出してしまう恐れがある。

 長引く経済不況の中、国民の消費マインドは冷え込んだまま。リストラや派遣切りなどの雇用不安から、低所得者層が増えているという状況もあり、昨年まで、売れ行きが好調だった地デジ対応テレビも、ここにきて売上が伸び悩んでいる。

 そこで政府は、地デジ対応テレビを購入した全世帯に一律2万円程度の支援金を配布するという緊急対策の検討に入った。2年後の完全デジタル化を見据え、計画を1年間前倒しし、早期普及を目指す考えのようだ。また、NHK受信料を免除されている約260万世帯を対象に簡易型チューナーを無償で配布する方針を決めているが、社団法人である日本民間放送連盟(民放連)が、簡易型チューナーだけではなく、地デジ対応テレビ自体を配布することを提案している。簡易チューナーなら2009年から2年間で約600億円程度と試算されるが、これが地デジ対応テレビ自体を配布するとなると、7万円前後の20型薄型テレビを想定して、アンテナ工事費も含めれば1世帯あたり約10万円かかることになり、合計で約2600億円が必要になってくる。民放連の考えでは、デジタル化支援は、家電業界という日本を牽引する産業の活性化にも繋がるとしているが、これらの費用は全て国、つまり我々の税金ということになるのだ。

 テレビは、今まで視聴者である我々にさまざまな恩恵を与えてくれた。テレビがなければ、世界各地で起っているさまざまな出来事を映像としてリアルタイムに知ることが出来なかったかもしれない。インターネットが発展する前までは、テレビだけが実際に経験することが難しいことを教えてくれる魔法の箱だったような気がする。地上デジタル放送への移行は、双方向サービスや鮮明な映像など、放送を発信する側にも、受信する側にも多くのメリットをもたらしてくれるだろう。ただ、地デジ対応テレビが浸透していない状況の中で、2011年7月までと強引に期限を設けてしまったことに、無理があったのではないだろう。日本より先に、地デジ完全化に踏み切った諸外国も、計画通りに行かず難航しているように、今後、日本もさまざまな問題に遭遇することになるだろう。最後に、地デジ完全移行によって起こりうる問題やデメリットを、テレビを中心としたメディアがあまり伝えていないということも疑問に思える。