サッポロビール(サッポロホールディングス <2501> )がセブン&アイグループ(セブン&アイ・ホールディングス <3382> )限定のプライベートブランド(以下PB)アイテムとして開発した「セブンプレミアム100%モルト」が、11月から全国のセブンイレブン、イトーヨーカドー、ヨークベニマルなどで販売されている。
セブンプレミアム100%モルトは、日本のビール大手5社では初めてのPB展開ということで注目を集めた。同商品はサッポロビールの主力「黒ラベル」に比べて約1割安い価格設定で、初年度の出荷は350ml缶にして2600万本、633ml大瓶20本ケース相当で約72万ケースを見込んでいる。
若者のアルコール離れやビールを除くビール系飲料、缶チューハイなどに押され、ビールの消費量は1990年代半ばをピークに年々減り続け、2011年には国内課税数量がピーク時の半分以下まで落ちこんでいる。2012年は16年ぶりに微増に転じることが確実になっているものの、けっして先行きは明るくない。そのビール業界にあってサッポロビールは2008年にシェアで3位から4位に転落。主力の黒ラベルとプレミアムビールのヱビスブランドの各種ビールを合わせても、23年連続1億ケース超を記録するトップのアサヒビール・スーパードライには遠く及ばない。しかし業界内では、「日本のビールメーカーはナショナルブランド(以下NB)があるため、特定のPB展開には応じないだろう」という見方が一般的だった。
「今回のサッポロさんは名より実をとったということでしょうね。コンビニだけじゃなくビールとビール系の売り場を確保するだけでも状況はし烈です。セブン&アイさんのPBならあるいい場所に並べてもらえるし、お客への後おしもしてもらえます。最悪の場合、自社のNB商品が売り場から締め出されたとしても、自社が生産するPBは残るわけですしね」と、ある酒類量販店の担当者は語る。
だからといってすぐに大手流通と国産ビールのPB展開が拡大することはなさそうだが、今回のセブンプレミアム100%モルトが、ビール業界内ではいい意味でも悪い意味でも起爆剤になる可能性はある。実際にセブン&アイのPB展開したのはサッポロビールだったが、他のメーカーでも特定のビールを「セブンイレブン限定」などの形での独占供給は始まっており、消費者にはおおむね好評のようだ。(編集担当:帯津冨佐雄)