大型ディスプレイが低迷する一方、スマートフォンやタブレット端末の普及により順調に伸長している中小ディスプレイの市場。この伸長の波にうまく乗ることが出来なかった日本企業は、軒並みマイナス成長となり、事業戦略の見直し等の対策を迫られている。その動きがここにきて活発化しているようである。
3月に電子機器の受託製造サービスの世界最大手企業である鴻海グループとの業務提携を発表したシャープは、本年1月20日に科学技術振興機構と、酸化物半導体(IGZO)を用いた薄膜トランジスタに関する特許のライセンス契約を締結していたことを発表。この酸化物半導体(IGZO)を採用した高性能な液晶パネルの生産を、亀山第2工場で3月より開始し、4月から本格的な生産に移行している。新材料である酸化物半導体(IGZO)の採用により、従来に比べて薄膜トランジスタの小型化が図れ、1画素あたりの光の透過量を高めることができるので低消費電力化が可能になっているという。
また三菱電機は、大画面で迫力ある動画を楽しめるフルHD(表示画素数1920×1080)対応のIPS方式27型ワイド液晶ディスプレイ「Diamondcrysta WIDE(ダイヤモンドクリスタワイド)」の新製品を6月15日に発売すると発表。この新製品は、27型IPS方式液晶ディスプレイとして国内最速応答速度を達成しており、さらに、「高透過率IPS方式液晶パネル」採用により、消費電力を従来品比約29%削減している。
その他、旭硝子が次世代ディスプレイなどの実現に向けた、超薄板ガラス積層技術を開発するなど、ディスプレイを支える技術開発も進んでいる。さらにソニーは、シャープとの大型液晶パネルと液晶モジュール製造・販売事業の合弁解消を発表。一方でパナソニックと次世代のテレビ技術とされる有機ELの技術開発に向けて提携交渉に入ったと報じられるなど、業界再編も加速している。
これらの新製品や新技術、事業戦略・業界再編などは、どれだけ功を奏するであろうか。ソニーやパナソニックなどの日本企業が再興する為には、この市場で再びシェアを獲得する必要があるであろう。韓国のサムスン電子とLG電子は、年内に55型の有機ELテレビを発売する計画であるという。日本企業にとって、今年一年が勝負の年と言えるのではないだろうか。