企業が投資家などに対し、経営方針や経営成績、決算概要や業績予想などの必要な情報を自発的に開示するIR活動。2012年1月31日から3月9日までの間に日本IR協議会によって実施された「第19回 IR活動の実態調査」によると、株式上場企業の内、IR活動をしているのは約97.6%と過去最高の実施比率となるなど、その活動は定着化しているようだ。
5月から6月にかけては、3月に決算をむかえた上場企業の多くが決算発表を行い、それに伴う決算説明会を実施。また、その後に控える株主総会においても、経営陣が自分達の経営方針に対する株主の支援を得るための活動を中心とした、IR型総会が増加傾向にある。
エルピーダメモリの会社更生手続開始決定で大きくゆれた半導体業界では、東芝が5月8日に2011年度通期決算説明会を、5月17日には2012年度経営方針説明会を実施。ソニーも5月10日に2011年度第4四半期の業績説明会を実施している。こうした説明会は、その模様をHP上で音声・動画配信している企業も少なくない。ソニーは、HP上に資料をアップして業績説明会をインターネット中継するなど、投資家への利便性を高めるための取り組みが広がっている。
また、通常の決算説明会とは別に、投資家向け説明会を開催している企業も多く見られるようになってきた。アサヒグループホールディングスが味の素からカルピスを買収したことで注目の集まった飲料業界では、JTが投資家説明会と個人投資家向け説明会を実施。ダイドードリンコも決算発表直後の個人投資家向け説明会に加え、四半期では東京・大阪に限らず、地方でも会社説明会を開催するなど、熱心な活動を続けている。同社は先日、上海米源グループとの資本提携や、ドライゼリー市場トップシェアの「たらみ」の100%子会社化を発表。企業側としては、こういった戦略的事業投資の理解を、株主や投資家に得る機会としても、説明会の場を活用しているようだ。
近年では個人投資家向けIR説明会の開催情報に特化したサイトが開設されるなど、IR支援会社の活動も活発化。前出日本IR協議会の調査によると、IR実施企業のうちIR支援企業を利用している企業は61.9%となっており、前年比2.4%増加している。一方で「財務情報に現れにくい企業価値の説明」「個人投資家向けIRの充実」を多くの企業がIR活動の課題として上げており、この課題に対し、今後も様々な形で企業のIR活動が活発化していく傾向となるのは間違いない。投資家側はこうした企業の取り組みをうまく活用すれば、多くの情報を得る機会となるだろう。