ニコン決算で鮮明になった“脱カメラ”の苦戦 巨額赤字の背景とは

2026年05月09日 06:59

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ニコンが2026年3月期に860億円の最終赤字。金属3Dプリンター事業での約906億円巨額減損や、精機事業の赤字転落が響きました

今回のニュースのポイント

ニコンの2026年3月期決算は営業損失1,124億円と大幅赤字に転落しました。主因は次世代の柱と期待した金属3Dプリンター事業での約906億円の巨額減損です。カメラ事業は堅調ですが、新規事業の利益化遅延や投資負担が重なり、「脱カメラ」を掲げる老舗光学メーカーの構造転換の難しさが露呈した形です。

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一眼レフ市場を代表する存在だったニコンが、厳しい局面を迎えています。本日公表された2026年3月期の連結決算(IFRS)は、売上収益が6,771億63百万円(前期比5.3%減)に対し、営業損益は1,124億48百万円の赤字(前期は24億円の黒字)へと転落しました。親会社株主に帰属する当期損失は860億88百万円と大幅な最終赤字となり、配当は前期の50円から40円へと減配される見通しです。

市場の関心を集めたこの「巨額赤字」の主因は、カメラの販売不振そのものではなく、ニコンが次代の収益の柱として投資を続けてきた「デジタルマニュファクチャリング事業(主に金属3Dプリンター)」にあります。同事業では、市場成長率の低下や競争激化を背景に、ドイツの子会社Nikon SLM Solutions AGに関連して約906億円(90,627百万円)の減損損失を計上。期待の成長分野が、足元では全社の利益を大きく押し下げる結果(セグメント営業損失1,062億円)となりました。

かつて「カメラ頼み」とも言われた事業構造からの脱却を目指すニコンにとって、各事業で収益面の課題が表面化しています。半導体露光装置などを手掛ける精機事業は、AI関連こそ堅調なものの、それ以外のデバイス需要の低迷や装置販売台数の減少により、約45億円の営業赤字に転落しました。ヘルスケア事業も米国市場の停滞や関税影響を受け、営業利益は前期比約77%減と激減しています。

一方で、映像(カメラ)事業そのものは黒字を維持しています。高価格帯モデルの需要は根強く、ニコン初のデジタルシネマカメラ「ZR」などが販売を牽引しました。しかし、競争激化に伴うプロモーション費用の増大や為替・関税の影響により、映像事業の営業利益は前期比約60%減の約167億円に留まっており、利益率が低下しやすい構造も浮き彫りになっています。

今回の決算は、将来成長へ向けた事業整理の側面も持ち合わせています。ニコンは新中期経営計画において、「デジタルシネマ」「大型金属3Dプリンター」「半導体後工程向け露光装置」の3分野に経営資源を集中配分する方針を改めて示しました。

今回の結果は、老舗光学メーカーがAIや半導体、産業機器の時代にどう生き残るかという、日本の製造業全体に通じる構造転換の難しさを映し出しています。今回の損失処理を進めたうえで、いつ次世代事業を軌道に乗せられるのか、市場の関心が集まっています。 (編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)