刑期が定まっていない懲役刑「無期懲役」。死刑の次に重い刑罰で、殺人や強盗致傷、放火、身代金目的誘拐など重大犯罪に対する刑罰として知られている。一方で死ぬまで服役が課せられる「終身刑」と異なり、あくまで「刑罰の期間が決まっていない」刑罰。そのため「無期懲役の判決が下されても、20年以上お勤めをしたら仮釈放でシャバに出られる」と誤解されていることも多いが、現実はそれほど甘くないようだ。
確かに1990年代までは無期懲役に処されていた受刑者でも仮釈放が認められて出所できたというケースが多かったが、近年ではなかなか仮釈放が認められにくくなっている。
法律上では仮釈放は服役してから10年経過すれば認められると要件が定められているが、この10年というのはあくまで「仮釈放が認められる条件」であって、10年服役したからといって必ずしも仮釈放が認められるとは限らない。
実際には仮釈放が認められやすいのは有期刑の上限以上の服役者だ。以前は20年が有期刑の上限だったため、20年以上刑務所に服役していれば仮釈放の可能性が出てきたが、2005年の刑法改正で、有期刑の上限が30年に引き伸ばされた。そのため、最低30年は服役しないと仮釈放の条件すら満たされないのだ。
しかも仮釈放が認められるためには「更生の意欲がある」「再犯の恐れがない」「受刑態度が良い」といった基準で審理がなされた上で、基準を満たしていると判断されて初めて認められる。この審理も年々厳しくなっており、14年には1842人の無期懲役受刑者のうち、仮釈放が許可されたのはたった6人のみ。可能性は1%以下で、無期懲役という判決が出た時点で、ほぼ出所できないと思ったほうが良い。
当然、仮釈放者の平均受刑期間も延びており、1990年には20年程だったものが、10年には35年にまで上昇している。
少なくとも30年はお勤めし、やっと審理の対象になっても仮釈放が認められる可能性はほぼ0に等しい。無期懲役刑は「いつかはシャバに出られる」というイメージほど甘くなく、実際は終身刑と近い厳しい刑罰なのだ。(編集担当:久保田雄城)