日本は他の先進国と比べ、女性の政治、経済的な地位が低い。ジェンダー・エンパワメント指数(GEM)は109カ国中57位。女性政治家の割合は約1割で、部長以上の女性も5%未満に過ぎない。公的な場における発言力はまだまだ弱いといえるだろう。
ところが日本の女性たちに「生まれかわるなら男と女、どっち?」と尋ねると、7割の女性が「女」と答える。戦後しばらくは「生まれ変わるなら男」が多数派だったのに、高度成長期を境に価値観が逆転したのだ (統計数理研究所「日本人の国民性調査」)。男性は戦後一貫して「男がいい」が約9割と圧倒的多数なのに、女性の意識は「生まれ変わるなら男」から「女」へと大きく変化してきた。
同調査では「男と女、どちらの方が苦労が多いと思いますか?」についても尋ねているが、こちらは男女とも昔から一貫して「男」が多数派。ただし昔は「男と女、どちらの方が楽しみが多いと思いますか?」についても、「男の方が楽しみが多い」が多数を占めていた。
だが80年代頃を境に「女の方が楽しい」と考える女性が急増。一方「男の方が楽しい」と考える男性は7割から5割に減少し、女の方が楽しそうだと考える男性が徐々に増えている。
女性にとっては社会進出と同時に、苦労も増えたが「楽しみ」も増えた。働くようになれば所得が上昇し、大きな「楽しみ」である消費の機会も増える。30歳未満の可処分所得は男性を上回り、男女の賃金格差も少しずつ縮まってきた。こうした条件に加え、男尊女卑的な価値観が薄まったことで「生まれ変わっても女がいい」「女の方が楽しい」と考える女性が増えたのだろう。
このように戦後一貫して、女であることを肯定する女性が増え続けていることを考えると、日本は「政治・経済分野における進出は遅れているが、女性にとってはある程度、楽しく生きられる国」と言った方がより正確かもしれない。これを男女不平等と見るかどうかは、同じ女性でも意見が分かれるところだろう。