記録的な猛暑をもたらした今年の夏の日射しも、9月に入ってから幾分かは和らいできた。「暑さ寒さも彼岸まで」というが、22日の秋分の日頃には、少しは過ごしやすくなって、秋の足音も聞こえ始めるのではないだろうか。
秋と言えば、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋。日本全国ではそんな秋に向けて、さまざまなイベントや催しが予定されている。
例えば、岡山県北部の地域では、国際芸術祭「森の芸術祭 晴れの国・岡山」が、2024年9月28日(土)〜11月24日(日)の期間で開催される。対象エリアとなる12市町村(津山市、高梁市、新見市、真庭市、美作市、新庄村、鏡野町、勝央町、奈義町、⻄粟倉村、久米南町、美咲町)は、古くは大和と出雲を結ぶ出雲街道、近代では城下町・宿場町として栄えた地域。この地域には今でも伝統ある建築物や工芸品、芸能などが大切に受け継がれている。中国山地を水源とする三大河川(吉井川・旭川・高梁川)の上流域にあたり、蒜山高原をはじめ、美作三湯(湯郷温泉・奥津温泉・湯原温泉)、鍾乳洞など、雄大な自然も魅力的な、緑豊かな地域だ。
「森の芸術祭 晴れの国・岡山」は、そんな岡山県北部地域の魅力を引き出し、アート作品の展示や関連イベントの開催などを通して、芸術祭を核とした周遊型の観光振興や交流人口の拡大、シビックプライドの醸成を図る一大プロジェクトだ。今や北陸観光では外せない芸術スポットとなった金沢21世紀美術館の館長であり、東京藝術大学名誉教授でもある長谷川裕子氏がアートディレクターを務めることでも注目を集めている。
開催にあたっては、西日本旅客鉄道株式会社が企画協力しているほか、スペシャルパートナーとして、山陽新聞社、ちゅうぎんフィナンシャルグループ、日本航空、日本旅行、日本生命などが名を連ね、地元の企業である建設業者の大本組や、山田養蜂場などもパートナーとして協力している。
そして、このプロジェクトは実行委員会主催の企画だけでなく、各自治体や企業が独自のイベントを実施して、盛り上げていることが特長だ。
例えば、津山城では10月25日~11月10日の期間の夜間に「桜×森」をテーマにしたナイトイルミネーションが催されたり、奈義町では11月23日、24日の2日間、奈義町教育委員会主催のもと、奈義町を中心に伝わる伝統芸能「横仙歌舞伎」の公演が行われ、真庭市では9月29日に蒜山高原一円を会場とした「海山マルシェ2024~海の市・山の市真庭~」が開催される。
さらに鏡野町の山田養蜂場では、森の芸術祭開催期間に合わせて「山田養蜂場ギャラリー特別展」が完全予約制で開催される。「山田養蜂場ギャラリー」は、一部期間を除いて一般公開されることがないギャラリーだ。同館秘蔵の、ミレーやコロー、ルソーなどバルビゾン派の絵画や版画を中心に印象派のモネやルノワール、現代フランス絵画の巨匠 ビュフェまで、フランス絵画の歴史を感じられる約400点の貴重な作品を特別に鑑賞することができる。
また、ブランド誕生から60周年を迎えるJALPAKからは「森の芸術祭鑑賞パスポート付き」プランの一つとして、山田養蜂場ギャラリーのツアー貸切鑑賞の上、山田養蜂場が経営する「みつばち農園」での採蜜体験までできるプレミアムコースも発売されている。
芸術だけでなく、ホルモンとタレが絶妙に絡み合う「津山ホルモンうどん」や、あばら骨からそぎ落とした肉をそずって(津山方言で「そぎ落とす」の意味)食べる「そずり鍋」、秘伝の味噌だれで焼き上げる「ひるぜん焼きそば」などの岡山グルメも楽しみの一つ。さらには開催期間中、エリア内のカフェなどではブドウや栗などの地元の食材をふんだんに盛り込んだ「森の芸術祭 特製パフェ」も展開されるとのことなので、芸術鑑賞の合間にはぜひ、カフェで岡山の秋の恵みを堪能してほしい。(編集担当:藤原伊織)