汚染土再利用で最終処分量減らす狙いも安全性は

2025年08月12日 16:03

 東京電力福島第一原発事故により放射性物質に汚染された土のうち8000ベクレル/ kg 以下の汚染土は『遮蔽および飛散・流出の防止』を行った上で全国の公共事業で利用できるとして、政府は公共事業での「再利用」を進めるため、7月には4tトラック1台で汚染土の一部を官邸の庭に運び込み利用した。

 中間貯蔵施設に保管されている汚染土は東京ドーム11個分に相当する量。これを2045年までに福島県外で最終処分することが法定されている。期限まで20年。このため8000ベクレル/ kg 以下を再利用に回すことで最終処分量を減らす狙いがある。

 地元自治体からは最終処分に向けた工程を早く示してほしい旨の要望が政府側に出されている。伊藤復興大臣はこれまでの会見で「福島県内で発生した汚染除去土壌を中間貯蔵開始後30年以内に県外最終処分するという方針は法律にも規定され、国の責務であって、その実現に向けた除去土壌の復興再生利用等による最終処分量の低減が極めて重要」と強調していた。

 こうしたこともあって、政府は近々、直近5年に取組む事項の工程をまとめ、地元に理解を得たい意向。ただ8000ベクレル/kg 以下とする再利用基準について、反対している市民団体は「原子炉等規制法に基づく規則においては原発の解体などによって発生したコンクリートや金属などの再生利用の基準は100ベクレル/kgで、環境省方針は80倍」と懸念しているほか、「8000ベクレル/kg以下の土壌のうち、セシウムの場合、100ベクレル/kg を超えるものは『低レベル放射性廃棄物』として扱われるべき。従来の放射線防護の規制を蔑ろにする」(国際環境NGO・FoE Japan)との問題提起もある。セシウム137の場合、半減期は30年。道路整備に使用され、地震や土砂崩れで道路が崩壊し流出しないとは限らない。課題は多そうだ。(編集担当:森高龍二)