東京電力福島第一原発事故で放射能に汚染された「汚染土」のうち、1キログラム当たり放射線が8000ベクレル以下(1秒間に崩壊する原子核の数)であれば公共事業に再利用できるなどとし、福島県内での汚染土除去土壌を福島県外で再利用し、除去汚染土の量を減量させる狙いで、その先例をつくろうと19日、総理官邸内の庭の下地に利用するため「除染土」と称する汚染土を少量運び込んだ。
汚染された地域の地表を削って生じた量は東京ドーム11杯分(1400万立法メートル)ある。除染土を官邸で使用し、地方自治体での利用を促したい狙い。
環境省は理解醸成を図るため8月18日にコラッセ福島(福島県福島市)で「除去土壌等の県外最終処分・復興再生利用についてともに考える」パネルディスカッションを開く。参加はだれでもでき、環境省HPから参加申込フォームで必要事項を記入。8月3日までに申し込みを受けた人には4日に連絡が入る。多数の場合は抽選。参加費は無料。質問もHPで受け付けている。パネルディスカッションで質問に回答するとしている。
除染土には半減期が30年という放射性物質「セシウム137」などが含まれており、1キログラム当たり放射線が8000ベクレル以下で安全とする基準についても、科学的根拠などに疑問を呈する専門家の声もある。
除染土再利用の際、除染土の上に通常の土を被せて道路などに使用する計画だが、頻発する地震や豪雨などでの災害で崩落や陥没が起きた時には放射能汚染土が流出・拡散するリスクがある。
政府の安全基準に関し「復興再生に名を借りたクリアランスレベルの二重基準などあってはならない。放射性廃棄物の処理基準を80倍も緩和。放射性物質を環境中に拡散する危険なもの」(溝川悠介大阪府立大名誉教授・応用物理学)と重大視する意見もある。(編集担当:森高龍二)