乾燥と寒気に包まれる冬の時期は、火災リスクが最も高まる季節だ。総務省消防庁のデータによると、火気を使用する機会が多い冬季から春季にかけての出火件数が、年間総出火件数の約6割を占めており、特に12月から3月にかけては出火件数が急増する傾向がみられる。これは、空気が乾燥し、暖房器具の使用が増えることに加え、強風が火災の延焼を助長するためと考えられる。
こうした火災ニュースが相次ぐ季節を前に、木造住宅の安全性に対する常識を覆す実証実験が実施された。注文住宅ブランドアキュラホームを展開するAQ Groupが「実物大 木造住宅耐火実験」を行い、独自の構法で建築した住宅が高い耐火性を備えていることを証明し、従来の「木造住宅は燃えやすい」というイメージを払拭する結果を出したのだ。
今回の実験に用いられたのは、同社のオリジナル技術である「AQダイナミック構法」で建築された木造試行棟の一室。木造の柱や梁をあえて露出させた実験スペースで、実際に火災を発生させたところ、火災発生からわずか数分で室内の温度は急上昇し、13分前後で約300℃に到達した。火は天井部に届くほど大きくなったものの、露出している木造の柱や梁に引火することはなかった。省令準耐火構造(住宅金融支援機構が定める仕様に適合した木造住宅の構造)の性能基準とされる15分が経過した後も実験は続行されたが、約20分が経過しても延焼は認められず、鎮火後も建物を支える構造体は煤で汚れた程度だった。
総務省が公表している「令和6年版 救急・救助の現況」によると、消防車などの救急車両が119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間は全国平均で約10分だという。つまり、住宅は火災発生から最低でも10分間は延焼を抑える耐火構造が必要ということだ。今回のAQ Groupの実験では、消防車が到着する平均時間である10分、さらに放水が始まる15分を超えても延焼はみられず、高い耐火性が実物大で実証されたことになる。
この耐火性の背景には、AQ Groupが追求する木造住宅の安全性へのこだわりがある。今回の実験には、木造建築防耐火研究の第一人者である安井昇氏(桜設計集団一級建築士事務所代表)が参画しており、安井氏曰く「住宅火災はいかにして燃え広がりを留めるかがポイント」だという。「AQダイナミック構法」は、省令準耐火構造を反映させるだけでなく、火が入りやすいとされる石膏ボードの繋ぎ目の下地材を通常よりも幅広くするなど、「耐火基準のさらに上」をいく独自の工夫が施されており、この構造的な強化が、初期消火や避難のための貴重な時間を確保し、火災の被害を最小限に抑えることを可能にしている。
今回の実験結果は、最新技術と構法の進化によって、木造住宅が従来の「火災に弱い」というイメージから脱却し、高いレベルの安全性を兼ね備える時代に入ったことを示しているといえるだろう。火災が多発する季節を迎えるにあたり、住宅の耐火性に対する関心は一層高まりそうだ。また、近年は環境への配慮の観点などからも、中高層の木造ビルやマンションへの関心が高まっているが、この実験結果がどんな影響を及ぼすのか注目していきたいところだ。(編集担当:藤原伊織)













