バッテリー長持ちの鍵はオペアンプにあり? 日本の技術が小型化と低電流を両立

2025年09月20日 11:15

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一般的な消費者は、最終的に完成した製品しか目にする機会がないため、普段は気にすることもないが、最新のアプリケーションを支えている部品があり、その部品の更なる進化のために日本のエンジニアたちが切磋琢磨していることを忘れないようにしたい

 ハンディ計測器やウェアラブル端末など、高度な制御が求められるアプリケーションの市場拡大に伴って、温度、湿度や振動、圧力、流量などを数値化するためのセンサおよび、センサ信号を増幅するオペアンプの役割は重要度を増している。

 オペアンプは、微弱な電気信号を増幅して出力する集積回路(IC)で、様々な回路でアナログ信号の処理に用いられている。例えば、計測器だけでなく、家電製品から産業機器、ガス検知器や火災報知機など、あらゆる機器に搭載されているセンサの信号を増幅するのもオペアンプの重要な役割の一つだ。高帯域幅、および高精度であることはオペアンプに求められる重要な要素だが、ハンディ計測器やウェアラブル端末、屋内検知器などの限られたスペースへの積載が要求される小型アプリケーションにおいては、オペアンプのさらなる「小型化」、そしてバッテリーの電力をできるだけ長く使うための「消費電流低減」が重要となる。

 そんな中、ロームが超小型で動作時の回路電流を業界最小に抑えたCMOSオペアンプの新製品「TLR1901GXZ」の開発を発表し、業界で話題になっている。

 同製品は、ボールピッチを0.35mmまで狭小化したWLCSP(Wafer Level Chip Scale Package)を採用することで、1mm角以下の超小型化を実現するとともに、一般品と比べて回路電流を約38%以上も低減した、業界最小超低消費電流の160nA(Typ.)を実現。バッテリーの長時間駆動に貢献するほか、入力オフセット電圧も最大0.55mVと非常に低く、約45%も低減されることで、微小信号の増幅に有利な特性を持っている。

 圧倒的な低動作電流と、低消費電流オペアンプでは群を抜く最大0.55mVという入力オフセット電圧を可能にしたのは、同社独自の「パッケージ技術」、そして「Nano Energy™回路技術」だ。Nano Energy (ナノエナジー)は、ロームの垂直統合型生産体制における「回路設計」「レイアウト」「プロセス」、3つの先端アナログ技術を融合することで実現する超低消費電流技術だ。同製品では、これをベースに新規に開発した基準電流源によって、特に温度による電流増加を徹底的に抑制することで、動作電流160nAを達成したという。

 オペアンプの歴史をさかのぼると、1940年代の真空管時代にまで至るという。アナログ計算機の演算素子として開発されたオペアンプは、1950年代のトランジスタ、1960年代にはじまる集積回路の時代を経て、センサやAIが全盛の現代においても、最先端の電子機器にも不可欠な部品として日々進化を続けている。

 我々一般的な消費者は、最終的に完成した製品しか目にする機会がないため、普段は気にすることもないが、最新のアプリケーションを支えている部品があり、その部品の更なる進化のために日本のエンジニアたちが切磋琢磨していることを忘れないようにしたい。(編集担当:今井慎太郎)