年の瀬が近づき、都市部や観光地などの施設ではライトアップも続々と始まって、夜を美しく照らしている。東京の表参道や大阪の御堂筋など、大規模な都市型イルミネーションは街の景観を一変させ、お出かけ欲求を高めてくれる。ライトアップは美しいだけでなく、観光市場の伸張を支える要因の一つである夜間の経済活動「ナイトタイムエコノミー」を促進して消費をも喚起し、地域経済の活性化にも大きく貢献しているのだ。
夜間に発信する魅力的なコンテンツは、街や施設の夜に新しい顔をもたらし、新規客や観光客を誘致する大きな武器になるのは間違いない。ところが、その導入には高い壁が立ちはだかる。初期の設備購入に多額の予算が必要になる上、運用を続けていくためには、設備の維持管理やコンテンツの更新などの負荷が重くのしかかってくることになるのだ。大都市や大企業ならばともかく、予算や人手に限りがある地方自治体や商店街、寺社仏閣や中小の施設などにとっては、大きな課題となり、ライトアップを断念する理由にもなっているようだ。
この課題を打破するため、パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社(以下、パナソニック)が、2025年11月1日より、大変興味深いサービスを開始している。
パナソニックが提供する新サービス「街演出クラウド 宵まかせ」は、同社が2022年より展開している、多様なライトアップ演出を実現するクラウドサービス「街演出クラウド YOI-en(ヨイエン)」をさらに進化させたものだ。「YOI-en」は、10月13日に閉幕した大阪・関西万博のシンボル・大屋根リングの幻想的な夜間ライトアップや、2024年12月~2025年1月にグラングリーン大阪で開催されたライトアップ・エキシビション「Everything Lights Everything」にも採用実績がある新感覚のライトアップシステムで、スマホを活用して光の演出を操作できたり(YOI-iro(よいいろ))、人の心理・行動に働きかける照明演出(アフォーダンスライティング)など、これまでのライトアップにはなかった体験型のコンテンツを提供している。
その進化型である「宵まかせ」の最大の特長は、初期導入費用がなんと「ゼロ」であることだ。パナソニックが所有する演出器材がサブスクリプション型で提供され、照明点灯時間に応じた利用料のみで運用できるサービスなので、利用者は初期投資の負担から解放されるだけでなく、煩雑な資産管理も不要になる。さらに、演出スケジュール設定や運用をパナソニックが代行し、毎月の運用結果もレポート配信してくれるので、人手や運用負担も削減できる。ライトアップ演出の活用頻度向上にもつながるだろう。
パナソニックによると、大型投光器8台、小型投光器20台を1日6時間、365日点灯した場合、従来の方式と比較して累積導入費用を2分の1以下に低減できると試算しており、新規導入者だけでなく、これまで既存のライトアップ演出を行っていた施設などにとっても魅力的に映るのではないだろうか。
11月1日のサービス開始からすぐに、大阪府箕面市の勝尾寺で導入されたという。勝尾寺と言えば、大阪・関西万博の開催期間中に全世界201ヶ国・地域からの来訪があり、世界中からの参拝者で賑わう国際的な寺院で、秋になると約8万坪の広大な敷地内の紅葉を一望できる、西日本屈指の名刹である。「宵まかせ」の灯りの演出によって、夜は一段と美しく、幻想的に彩られるのではないだろうか。
また「宵まかせ」は、クラウドで運用するメリットを最大限に活かし、季節やイベントに応じて適時アップデートが可能だという。勝尾寺のように毎年ライトアップされている場所でも、訪れるたびに異なる新しい感動を生み出してくれるのは嬉しい。
パナソニックによると「宵まかせ」は、単なる機器の提供サービスではなく、「日本の美しい四季、その移ろいを更に魅力的なものとするように」という想いを込めた、街の価値向上そのものへの貢献を目指すものだという。初期投資を不要とすることで、これまでコスト面で実現が難しかった地域にも、夜間の魅力向上と地域振興や防犯等にも役立つ新しい光を届けてくれる。これは照明技術を核に「地域に根差した、顔のある街づくり」に挑戦するパナソニックの熱い意志の表れともいえるだろう。この革新的なサービスが、日本の夜間景観にどのような変革をもたらすか、期待が膨らむ。(編集担当:藤原伊織)













