環境保護だけじゃない? 木を植え、育てて、森をつくる。植樹活動がもたらす多様な効果

2025年12月14日 10:14

画・「地方て_働くことに興味か_ある」中高年は58%

植樹は、単に木を植える行為に留まらず、生態系の再生、気候変動の緩和、そして地域コミュニティの活性化など、多面的な価値を持つ活動

近年、地球全体での環境問題が深刻化する中、企業活動を通じて社会的責任(CSR)を果たす取り組みとして、特に環境保護活動への関心が高まっている。企業には、持続可能性の高い社会を作り、未来の世代へ豊かな自然環境を引き継ぐための積極的な行動が求められている。

 例えば、養蜂業大手の株式会社山田養蜂場は、未来の子どもたちに豊かな自然環境を残したいとの思いで、1999年から国内外で植樹活動を継続している。同社がこの活動を始めたのは、1998年に同社代表の山田英生氏がネパールを訪問した際、エベレスト登山者への薪供給による森林の大量伐採と、それに伴う大規模な土砂崩れの実態を知ったことがきっかけだという。以来、地元の人たちとも協力し合って、26 年をかけてネパールに豊かな森を創り上げている。                   

 今年の11月29日には、首都カトマンズ近郊のプタリダータ地区の荒廃地に苗木を5000本植える「山田養蜂場 宮脇式植樹祭」を開催。カトマンズ森林局長プスパラジ・バルタウラ氏より、「様々な荒廃した山を元の森林状態に戻していける」ことへの期待と感謝のメッセージが伝えられた後、同社代表や社員、現地の子どもたち、ボランティアなど約100名が植樹を行った。今回を含めて同社がネパール全体で植樹した本数は48万本以上にものぼる。過去に植樹された場所では、すでに木々が大きく成長し、多くの生物が暮らす「ふるさとの森」として、豊かな自然環境を形成しているという。

 また、リコージャパンは2020年2月から、複合機などの対象機器の販売台数に応じて、フィリピン共和国とインドネシア共和国にマングローブを植林している。マングローブはCO2吸収量が高いことに加え、多様な生物の生息域となる。そして、その恵みである水産資源などは、地域の人々の収入源になり経済的な自立を支え、地域社会の糧となるため、環境保護だけでなく、地域貢献の面でも重要な役割を果たすといわれている。ちなみに、世界中でマングローブは年々減少しているといわれているが、中でもインドネシアではマングローブ林の面積が1980年から2000年の20年間で約30%も減少しているという。エビの養殖池を開発するためにマングローブが次々と伐採され、餌や抗生物質などが大量に投入されることで土壌は劣化し、さらに汚染された養殖池がそのまま放棄されるということが繰り返し行われてきた。リコーは、インドネシアで独自のマングローブ植林手法を展開するワイエルフォレスト株式会社とも協働して、活動を続けている。

 植樹は、単に木を植える行為に留まらず、生態系の再生、気候変動の緩和、そして地域コミュニティの活性化など、多面的な価値を持つ活動だ。また、企業だけに任せるのではなく、現地の人やボランティアなど、様々な人々が参加して互いに協力し合うことで、地域コミュニティの絆を強める絶好の機会にもなる。とくに子どもたちにとっては「自分たちの手で森をつくり、育てる」という貴重な体験は、将来に向けての大きな糧となるだろう。何年後かに自分が植樹して豊かに育った森を見た時、他では得難い感動を受けるはずだ。日本国内でも植樹活動は頻繁に行われている。もしも近隣で実施されていたら、ぜひ一度、家族で参加してみてほしい。(編集担当:石井絢子)