過去最高益更新の裏で進む「安定企業」の構造的変容。コストプッシュ・インフレと高固定費が招く現場の余裕喪失

2026年02月23日 20:09

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一見盤石な大手・老舗企業を襲う「利益率の二極化」。高市政権下の金利・エネルギー動向が伝統的製造業の損益分岐点を押し上げる正体

今回のニュースのポイント

・2026年3月期の上場企業純利益は、前年比3から4パーセント増の約54兆円強と、5年連続で過去最高を更新する見通し。一方で、原材料高やエネルギーコストの変動を背景に下方修正を行う企業も約20数社存在し、業種間での収益格差が鮮明に。

・経済産業省の調査によれば、国内製造業の平均固定費比率は約35パーセント(2025年実績値)に達しており、高市政権下の金利上昇期待(長期金利1.8パーセント超)に伴う調達コスト増が、価格転嫁の遅れている現場の利益率を圧迫。

・日経新聞など最近の企業アンケートで、現場担当者の約6割が「以前より経費管理が厳格化した」と回答。好業績の裏で、伝統的組織が変化に対応するための適応コストが肥大化し、現場の心理的余裕を奪っている。

 朝、スマートフォンのニュース通知には「上場企業が5年連続で最高益、54兆円突破へ」という景気の良い見出しが躍っています。しかし、オフィスに足を踏み入れると、人手不足を背景とした業務負荷の増大や、より厳格になった経費管理の空気感に、数字上の好況との乖離を感じる方も少なくないでしょう。

 全体像として日本企業が稼ぐ力を過去最高水準まで高めているのは事実ですが、その内実を詳しく見ると、構造的な二極化が起きています。高市首相による施政方針演説後の積極財政への期待感は、将来の成長を促す一方で、足元では長期金利の上昇やエネルギー価格の高止まりという側面を持ち合わせ、一部の伝統的企業にコスト増を迫っています。特に、国内製造業においては、経済産業省のデータでも固定費比率が平均35パーセントに達することが示されており、人件費や膨大な設備維持費といった重いコスト構造が、インフレ局面における利益率の重石となっています。

 最近の企業アンケート調査では、現場担当者の約6割が「経費管理の強化」を実感していると回答しています。これは、最高益を出すデジタル・サービス企業や輸出企業が利益を牽引する一方で、内需型の伝統的製造業などが損益分岐点の上昇に苦心している実態を反映しています。過去の成功体験に基づく大規模な組織ほど、現在の急激な環境変化に適応するための見えないコスト(調整コスト)が肥大化し、それが現場の余裕の欠如となって表れているのです。

 読者の皆さんが日々実感している仕事のしんどさは、必ずしも個人の努力不足ではなく、会社が直面しているこうしたマクロな構造変化への過渡期的な歪みである可能性が高いと言えます。自分の会社がどのような費用構造を持ち、利益をどこから捻出しているのか。その構造を客観的に把握することは、組織の持続可能性を冷静に見極め、自身のキャリアプランを立てるための重要な判断材料となります。

 安定とは、かつてのモデルを維持することではなく、新たなコスト構造へといかに迅速に移行できるかにかかっています。過去最高益という華やかなニュースの裏側にある構造の転換を理解することで、私たちは不確実な時代を生き抜くための確かな視座を持つことができるはずです。(編集担当:エコノミックニュース編集部)