今回のニュースのポイント
倒産143件、23年ぶりの高水準:2025年度の塗装工事業の倒産は前年度比22.2%増の143件を記録しました。東京商工リサーチ(TSR)によれば、これは過去20年で最多であり、23年ぶりに140件台を超える深刻な水準となっています。
原材料高騰と地政学リスクの直撃:ナフサ価格の高止まりに加え、イラン情勢に伴うホルムズ海峡の供給懸念の高まりが石油系溶剤の価格を一段と押し上げています。塗料大手・日本ペイントは2026年3月、希釈用シンナー製品を50〜75%値上げすると発表しており、現場のコスト増が経営を圧迫しています。
価格転嫁できない「零細中心」の業界構造:TSRの分析では、従業員10人未満の小規模事業者が全体の約93%を占める典型的な零細業種とされています。激しい価格競争のなかでコスト増を販売価格に転嫁できず、赤字が累積するケースが目立っています。
建設関連業界では、資材価格の高騰と人手不足を背景に、中小・零細事業者の経営環境が急速に悪化しています。特に塗装工事業においては、原材料価格の上昇分を元請けや施主への見積価格に反映できない「価格転嫁の停滞」が深刻化しており、収益を確保できないまま経営破綻に至るケースが急増しています。
東京商工リサーチ(TSR)の調査によれば、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の塗装工事業の倒産(負債1,000万円以上)は143件に達しました。これは前年度比で22.2%の増加であり、2002年度(162件)以来23年ぶりに140件台を超えたことになります。倒産の原因別では「販売不振」が約8割(117件)を占め、次いで「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が続くなど、受注単価の低迷とコスト増による採算悪化が直接的な要因となっている実態が示されています。
経営悪化の主因となっているのは、原材料である石油系溶剤の記録的な高騰です。塗料やシンナーの原料となるナフサの平均価格は、コロナ前を大きく上回る水準で推移しています。さらに、緊迫する中東情勢に伴うホルムズ海峡の供給懸念といった地政学リスクが調達コストを押し上げ、現場の仕入れコストはかつてない水準に達しています。これに慢性的な職人不足に伴う人件費の上昇が重なり、中小事業者はまさに「複合的な負担」がのしかかる状況に置かれています。
業界の構造的な脆弱性も被害を大きくしています。TSRの分析では、塗装工事業者は従業員10人未満の小規模事業者が全体の約93%を占める典型的な零細業種とされています。参入障壁が比較的低く価格競争が激しいため、元請けからの値下げ圧力や競合との相見積もりのなかで、コスト増を転嫁できずに自社で吸収せざるを得ない構造があります。結果として、内部留保の少ない小規模な下請け業者から順に体力が尽き、市場から退出する動きが進んでいます。
この影響は、一般消費者の生活にも波及する可能性があります。塗装業者の倒産・廃業が進めば、住宅のリフォームやマンションの大規模修繕における見積もり単価の上昇や、工期長期化・メンテナンスコスト増の懸念も高まります。これまでのような「安値での修繕」が困難になるなか、消費者は業者の選定や維持管理計画の再考を迫られる形となります。
2026年度も、地政学リスクに伴う資材高と供給不安が続く可能性が高いとみられています。人手不足と賃上げ圧力も解消の兆しに乏しく、価格転嫁を進められない企業とそうでない企業の格差はさらに拡大すると予想されます。塗装業界は現在、コスト増を吸収できない企業から順に再編が進む厳しい局面にあるといえます。今回の動きは、原材料価格の変動が価格決定権を持たない下請け事業者に集中する、日本の産業構造の一端を示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













