若者の「酒離れ」は本当か 進む“選別消費”と、背景にある価値観・経済の二重構造

2026年04月10日 18:45

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若者はなぜ酒を飲まないのか。「無理に飲まない」価値観と所得停滞・物価上昇の現実。ノンアル市場へ波及する“しらふ志向”の正体

今回のニュースのポイント

若年層の飲酒習慣は長期的な減少傾向:厚生労働省の調査では、20代で「飲まない・やめた・ほとんど飲まない」と回答する層が半数を超え、飲酒習慣率は明確に低下しています。

健康志向と「時間の質」を重視する価値観の変化:睡眠や美容、健康への影響を避けたいという意識に加え、オンライン中心の生活で「飲み会に付き合う必要がない」という空気が広がっています。

経済要因による「シビアな選別」が進行:物価上昇に対し実質的な可処分余力は伸び悩んでおり、時間とお金をどこに配分するかという視点から、酒類消費を抑制する方向に働いているとみられます。

「飲まない市場」への新たな商機:あえて飲まない「ソバーキュリアス」なライフスタイルに対応し、飲食店やメーカーでもノンアル・低アル飲料という新しい収益機会が生まれています。

 「若者の酒離れ」という言葉が定着して久しいですが、現場を詳しく見ると、単に「まったく飲まない」のではなく、酒との向き合い方が根本から変質している構造が浮かび上がります。厚生労働省の調査によれば、20代では「飲まない・やめた・ほとんど飲まない」と回答する層が半数を超え、飲酒習慣率は明確に低下しています。しかし、これは単なる嫌悪感ではなく、彼らなりの価値観と経済合理性に基づく「選別」の結果との見方があります。

 まず背景にあるのは、健康的なライフスタイルを重視する価値観の変化です。睡眠の質や翌日のコンディション、さらには美容への影響を考え、アルコール摂取を控える層が増えています。また、デジタルコミュニケーションの普及により、かつてのような「飲みニケーション」を通じた関係構築の必要性が薄れ、無理に周囲に合わせるよりも自分の時間を優先する傾向が強まっています。ここにあるのは、「必要な場面や価値を感じる対象にだけリソースを割く」という合理的な選択です。

 さらに、経済要因がこの構造を補強しています。物価上昇が続く一方で実質的な可処分余力は伸び悩んでおり、交際費としての飲み代に回せる余裕は以前ほど大きくありません。酒類価格そのものが上昇するなかで、飲み会の回数を絞る、あるいは1次会で切り上げるといった調整が若年層で目立っています。つまり、飲まないのではなく、限られた時間とお金をどこに投じるかをシビアに選んでいると考えられます。

 こうした変化は、新しい市場も生み出しています。あえてお酒を飲まないことを楽しむ「ソバーキュリアス(しらふ志向)」の広がりを受け、ノンアルコールや低アルコール飲料の市場が拡大しています。飲食店でも、ノンアルカクテルやアルコール度数0.5%前後のドリンクを充実させ、お酒を飲めない人が主役になれるメニュー構成を整える動きが広がっています。

 若者の酒離れは、旧来の「安く大量に売る」モデルにとっては脅威ですが、メーカーにとっては新しい収益機会の創出でもあります。多様化する価値観に寄り添い、飲まない時間の価値をどう提供するか。お酒という枠を超えた、新しい飲料文化の再編が進みつつあると言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)