今回のニュースのポイント
AGCと大成建設が窓ガラスの水平リサイクルを実現:日本生命東八重洲ビルの改修工事で発生した廃ガラスを回収・再資源化し、再び同じ建物の窓として設置することに成功しました。
同一建物内での再利用は国内初(AGC調べ):改修工事を起点に、ガラスを同一建物で循環させるスキームの構築・実装は国内初の事例となります。
環境省が取り組みを採択・後押し:建築物の改修・解体に伴う廃棄物削減と資源循環の高度化を目的とした公募事業の一つとして本取り組みを採択し、先行モデルとして支援しています。
単なる環境対応ではなく資源循環の構造転換:資源調達リスクの低減や廃棄物削減、製造時のCO2排出抑制を同時に達成する、持続可能な建設産業の確立を目的としています。
廃棄されていた窓ガラスが、再び同じ建物の窓として使われる――。一見すると環境対策の象徴的な取り組みに見えますが、その背景では資源の流れそのものが大きく変わり始めています。
大成建設とAGCは、日本生命東八重洲ビルの大規模改修において、地上4階から9階に設置されていた窓ガラス約5.7トンを回収しました 。回収されたガラスは、異物除去を経て「カレット」と呼ばれる建築用板ガラス向けの原料に加工され、新たに製造された網入り板ガラスとして2026年3月末に同ビルの窓に再設置されました。この「同一建物内での窓ガラス水平リサイクル」は国内初(AGC調べ)の事例であり、約3.4トンのCO2削減とバージン原料約6.8トンの節減効果が確認されています。今回の事例は、環境省のモデル事業に位置づけられたうえで、大成建設とAGCが共同で社会実装までこぎつけた点に特徴があります。
環境省は、建築物の改修・解体に伴う廃棄物削減と資源循環の高度化を目的とした公募事業の一つとして本取り組みを採択し、先行モデルとして支援しています。目的は単発の成功で終わらせることではなく、今回の「同一建物での循環」を社会実装の入口となるモデルとして示し、他案件や幅広い建築分野への横展開を促すことにあります。
なぜ、今これほどまでにガラスの再利用が求められているのでしょうか。そこには資源とコストの論理があります。AGCは、ガラス原料の一部を海外供給に依存するなか、この取り組みが環境負荷低減に加え、資源調達リスクの低減にも有効な選択肢となり得るとしています。また、カレットはバージン原料に比べて低温で溶解が可能であるため、製造工程のエネルギー使用量とCO2排出を抑制できるメリットもあります。さらに、改修・解体時に発生する廃板ガラスの多くが従来は埋め立て処理されていたことから、廃棄物削減は最終処分場の負荷軽減という観点からも不可欠です。
しかし、これまで水平リサイクルが普及するには大きな壁がありました。建築物からの安全な取り外しに加え、シーリング材やフィルム等の付着物を適切に除去し、建築用板ガラス向けの品質要求を満たすカレットに精製する必要があるなど、技術的なハードルがあったためです 。両社は2023年8月より実証を開始し、異物除去技術の高度化や中間処理工程の最適化に取り組んできました 。手間とコストのかかる工程をシステム化し、品質要求を満たすカレットを安定的に精製する体制を構築したことが、今回の実装の鍵となりました。
こうした事例は、廃板ガラスを「廃棄物」から「資源」へと転換させる、建設業界における新たな資源循環のあり方を示すものです。今後は同一物件での活用に限定せず、国内の製造拠点を中心とした広範な循環スキームへと拡大し、建築物の更新や新設を含む幅広い分野での活用が推進される見通しです。こうした取り組みが広がることで、調達リスクを抑えつつ環境負荷を低減する新しい産業戦略が、今後の建設産業における重要な方向性の一つになっていく可能性があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













