なぜ専業主婦の年金は見直されるのか 制度と社会のズレ

2026年04月14日 09:52

178 週末記事(ニート対策)_e

専業主婦の年金はなぜ議論になるのか 見えない負担と制度の課題

今回のニュースのポイント

第3号被保険者制度の見直し議論:会社員の配偶者などが、本人負担なしで国民年金を受給できる仕組みが大きな転換点を迎えています。

1985年創設時のモデルと現代の乖離:専業主婦が「標準」だった時代に作られた制度が、共働き世帯が多数派となった現在のリアルと適合しなくなっています。

「見えない負担」による不公平感:第3号の原資は厚生年金加入者全体と税負担で賄われており、独身者や共働き世帯からの是正を求める声が強まっています。

「年収の壁」と人手不足の解消:制度維持のための就労抑制が労働市場のブレーキとなっている点について、経済界や有識者から改善を求める提起が相次いでいます。

 専業主婦の年金制度が、いま改めて見直し議論の対象となっています。焦点となっているのは、会社員や公務員に扶養される配偶者が、自ら保険料を負担せずに基礎年金を受け取れる「第3号被保険者制度」です。本来、家族を支える基盤として設計されたこの制度ですが、現在の働き方や社会構造との間にズレが生じていると指摘されています。

 第3号被保険者制度は、1985年の年金制度改正で創設された仕組みであり、約40年前の日本社会を前提としています。当時は「夫が外で働き、妻が家庭を守る」という専業主婦世帯が標準的なモデルでした。このため、離婚や死別、あるいは自身の老後に備えて専業主婦の年金権をいかに確保するかが重要な課題であり、保険料負担なしで加入期間をカウントする仕組みは、家族単位での保障を確立するための合理的な設計でした。しかし、このロジックはあくまで「昭和の家族観」を前提としたものであり、社会の基盤そのものが変化した現代では、その前提が崩れつつあります。

 現在、共働き世帯数は専業主婦世帯を大きく上回り、女性の就労は当たり前のものとなりました。ここで浮上したのが、共働き世帯や単身世帯との「公平性」の問題です。自営業者などの第1号被保険者や、共働きで双方が厚生年金に加入する夫婦が自ら保険料を納める一方で、第3号は自己負担なしで同等の受給権を得ます。第3号の基礎年金相当分は、厚生年金保険料(18.3%を労使折半)と国庫負担などから拠出されるため、第3号本人が保険料を払わなくても、実質的には厚生年金加入者全体と税負担で支えている構図になっています。この「見えない負担」が制度内の不公平として、現役世代を中心に是正を求める声が強まる要因となっています。

 また、第3号の資格を維持するために、一定の年収を超えないよう働く時間を調整する「年収の壁」の問題も看過できません。深刻な人手不足が続く日本経済において、経済界や有識者からは、年収の壁や第3号制度がパート就労の抑制要因となり、人手不足を深刻化させているとの問題提起が相次いでいます。これを受け、2026年前後にかけては、短時間労働者への社会保険適用が企業規模要件や賃金要件の撤廃を通じて段階的に拡大する予定であり、第3号の新規該当者は今後大きく減っていくと見込まれています。

 こうした状況を背景に、政治の動きも加速しています。2026年4月13日の自民党と日本維新の会の実務者協議では、第3号制度の対象を「狭めていく方向」で検討を進めることで一致し、今後の社会保障制度改革の議論の中で具体案を詰めていくとしています。少子高齢化で財源が逼迫する中、「誰が、どこまで支えるのか」という全体の線引きをやり直さなければ、制度そのものが維持できないという強い危機感が背景にあります。

 専業主婦の年金をめぐる見直しは、家族を単位とした従来型の設計から、一人ひとりの働き方や生き方の多様性に対応した「個人単位の保障」へ、どこまで軸足を移すのかという問いでもあります。変化した社会の姿に合わせて、第3号制度を含む公的年金の線引きを改め、保険料負担・税負担の再配分をどう設計し直すかが問われています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)