建設現場から人がなくなるのか 遠隔操作が変える産業構造

2026年04月15日 10:49

大成建設

大成建設とNTTグループの実証により、建設現場の省人化と無人化が現実の選択肢となりつつある。(画像出典:大成建設ニュースリリースより)

今回のニュースのポイント

複数重機の一括遠隔操作に成功:大成建設は、離れた拠点から1人のオペレーターが3台の重機を同時に遠隔操作・自動制御する実証に成功しました。

次世代光通信「IOWN」を活用:NTTグループの次世代ネットワーク技術を用いることで、超低遅延かつ大容量の通信を実現し、操作の違和感を解消しています。

現場構築時間を大幅短縮:最新の高速無線「WiGig」により、従来は終日かかっていたネットワーク構築を約1時間に短縮。現場の「即戦力化」を可能にしました。

建設DXの進展:トンネル工事やダム工事など危険度の高い現場でも、自動運転や遠隔操作を組み合わせた無人化・省人化の取り組みが進んでいます。

 建設現場のあり方が変わり始めています。これまで「1人の熟練者が1台の重機を操る」のが当たり前だった建設業で、低遅延通信と自動制御技術の融合により、一人が離れた場所から複数の重機を動かす未来が現実味を帯びてきました。

 大成建設とNTTグループは2026年4月、三重県内の2拠点間を次世代光ネットワーク「IOWN APN」で結び、遠隔拠点から1台の運用卓で異なるメーカーの重機3台を遠隔運用・自動制御する実証に成功したと発表しました。三重県内の現場では、バックホウやクローラーダンプなど異なるメーカーの重機3台を1台の運用卓から連携させ、通常は3人が必要な一連の工程を1人でこなせることを確認しました。国交省が後押しする「建設機械施工の自動化・遠隔化技術に係る現場検証」の流れに沿い、実際の現場環境で複数の建機を統合的に制御できることが証明された形です。

 なぜ今、これほどの技術革新が求められているのでしょうか。背景には、建設業界が直面する深刻な人手不足とオペレーターの高齢化があります。地方の現場や災害復旧の最前線では「人が集まらない」ことが事業継続のボトルネックとなっています。特に危険箇所や山岳・ダム工事など、安全上のリスクが高い現場において、人を現場に置かない「働き方の抜本的な改革」は、もはや避けては通れない課題なのです。

 遠隔操作の最大の壁は「通信の遅延」でした。操作と映像にわずかでもズレがあれば、熟練者でも正確な作業は困難になります。今回の実証では、NTTが推進する次世代光通信基盤「IOWN(アイオン)」のほか、ローカル5Gや60GHz帯高速無線LAN「WiGig」などを活用し、遠隔地からでも違和感の少ない操作応答を実現しました。

 こうした技術が普及すれば、これまでの「多くの作業員が現場に常駐する」という前提が崩れます。例えば、無人化施工が導入されたダム現場では、現場・発注者とも残業時間が大幅に軽減されるなど、生産性と安全面での効果が確認されています。将来的には、重機オペレーターが現場に常駐するスタイルから、遠隔操作室から複数の現場を監視・操作する「センター化」へと移行し、現場に残るのは最小限の保守・監視要員のみになるでしょう。

 建設業界では、現場を3Dデータでデジタル再現する「デジタルツイン」を活用し、その上でAIが最適な施工計画を立て、自律型建設機械が作業を行うような取り組みも始まっています。建設機械の遠隔・自動運転は、自動運転車や自律航行船と同様、センサー・AI・高精度測位を組み合わせたロボティクス技術の一環であり、他産業と技術基盤を共有しながら進化しています。

 重機の遠隔・自動制御が進むことで、建設業は「人が現場で汗を流す産業」から、「ソフトウェア・通信・プラットフォームを中心としたシステム産業」へと構造を変えていきます。今後は、完全無人化が可能な領域をどこまで広げられるか、そして安全ルールや責任分担をどう設計するかが、建設現場から人が「移動」するスピードと範囲を決めることになるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)