日立エナジーが送電網で韓国企業と協業 電力は国境を越えるか

2026年04月16日 10:26

今回のニュースのポイント

日立製作所が日立エナジーと韓国企業の戦略的協業を発表:日立製作所は15日、グループの日立エナジーが韓国サムスンC&Tと高圧交流送電(HVAC)分野での戦略的協業に向けた覚書(MoU)を締結したと発表しました。

高圧交流分野でのプロジェクト形成を加速:両社はこれまで長距離送電向けの直流(HVDC)分野で協業してきましたが、新たに交流分野でも案件を共同で特定・評価し、グローバル市場での展開を強化します。

再生可能エネルギー拡大とレジリエンス向上:変動性の高い再エネ導入に対応するため、強じんで柔軟な送電網の構築を推進。電力網の近代化を通じてエネルギー安全保障を支援します。

将来的な国際連系線の整備を見据える:これまでの海外プロジェクトでの実績を基盤に、将来的には国境をまたいだ電力融通も含めた、より柔軟な系統運用の実現を視野に入れています。

 電気は国内で完結するもの――欧州などではすでに国際連系線を通じた電力取引が一般化していますが、日本では長らく「国内で需給を完結させる」前提で系統が設計されてきました。しかし、グローバルなエネルギー転換が進むなか、その前提が変わりつつあるとの見方もあります。

 日立製作所は15日、送電事業を手掛ける日立エナジーが、韓国の建設・エンジニアリング大手サムスンC&Tと高圧交流送電(HVAC)分野における戦略的協業に向けた覚書(MoU)を締結したと発表しました。両社は今後、グローバル市場において有望な案件を共同で特定・評価し、具体的なプロジェクト形成に取り組んでいく方針です 。日立エナジーが持つ世界トップクラスの送配電技術と、サムスンC&Tの大規模インフラにおける設計・調達・建設(EPC)の実行力を結集し、国際的な電力インフラ案件の獲得を目指します。

 背景には、世界的な再生可能エネルギーの導入拡大と、モビリティやデータセンターの急増による「電化」の進展があります 。太陽光や風力などの再エネは発電量が天候に左右されるため、電力系統の変動性が高まっており、安定供給を維持するための強じんなインフラ整備が不可欠となっています。各国・各地域での送電網の近代化や連系線の整備が進めば、将来的には国境をまたいだ電力の融通も含めて、より柔軟な系統運用が可能になると期待されています。

 日本においても、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、地域をまたぐ送電網の強化や国際連系線の是非についての議論が活発化していますが、周波数の違いといった特有の技術的課題も存在します。

 両社はこれまでも中東やオーストラリアなど、複数の地域の送電プロジェクトで協業実績を重ねており、特に長距離送電向けのHVDC(高圧直流送電)案件で経験を蓄積してきました。今後は直流に加え交流技術を組み合わせた統合ソリューションを提供することで、より広域的で複雑な電力ネットワークの構築を目指します。

 日立エナジーは、強じんで柔軟な交流送電網こそが、大規模な再エネ導入とエネルギー安全保障を支える前提であると強調しています 。これは電力を単一の設備ではなく、データ通信のように広域で繋がる「ネットワーク」として捉え直す視点です。今回の協業の広がりは、送電網を各国内だけで完結させる時代から、必要に応じて国境もまたいで電力を融通し合う時代へ、ゆっくりと軸足が移りつつある動きを示しているとみられます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)