通信インフラは空へ ソフトバンクが実証した新構造

2026年04月21日 12:02

EN_re5_01

基地局は成層圏へ ソフトバンクが干渉を抑え空飛ぶ基地局の実用化へ前進

今回のニュースのポイント

上空基地局と地上の周波数共用に成功:ソフトバンクは、成層圏から通信を提供する「HAPS(空飛ぶ基地局)」と地上の基地局が、同じ周波数帯を使いながら干渉を大幅に抑制し、共存できることを示す実証に成功しました。

「ヌルフォーミング」で干渉を低減:上空基地局からの電波のうち、地上の基地局方向へ向かう成分を抑圧する「ヌルフォーミング技術」を適用。地上側の通信速度が、干渉のない環境と比べても実用上遜色ない段階まで改善することを確認しました。

2026年に国内プレ商用サービス開始へ:同社は2026年に日本国内でHAPSのプレ商用サービスを開始する計画です。まずは大規模災害時のバックアップや、山間部・離島などのエリア補完としての活用を想定しています。

3次元空間でのネットワーク構築:地上だけでなく、空(HAPS)、さらに宇宙(衛星)までを多層的に結ぶ「移動通信3次元空間セル構成」の実現に向け、屋外環境での干渉抑圧技術の実証を積み重ねています。

 通信インフラは今、地上の制約を脱し、空へとその領域を広げ始めています。ソフトバンクが進める「HAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム)」の実証成功は、モバイルネットワークの構造変化につながる可能性のある取り組みです。

 今回の実証の核心は、有限な資源である周波数をいかに有効活用するかにあります。HAPSは高度約20kmの成層圏から直径数百kmという広大なエリアをカバーしますが、その際に地上の基地局と同じ周波数帯を使うと激しい電波干渉が起きてしまいます。これに対し、ソフトバンクは「動的ヌルフォーミング」などの干渉低減技術を開発。上空からの電波が地上の基地局へ向かう成分をピンポイントで抑え込むことで、地上側の通信品質を実用上損なうことなく共存できることを屋外実験で示しました。

 背景には、爆発的に増大する通信需要と、地上の物理的なエリア構築の限界があります。山間部や離島、海上など、地上基地局の設置コストが膨大になる地域に対し、「地上だけで基地局を増やす」モデルはすでに限界を迎えつつあります。また、災害時に地上のインフラが寸断された際のレジリエンス(復旧力)の確保も、社会的な課題となっています。

 ソフトバンクが描くのは、地上・空・宇宙の3層で通信を網羅する「空間インフラ」の多層化です。HAPSは人工衛星よりも低高度にあるため、遅延が少なく、スマートフォンなどの一般的な端末をそのまま利用できる利点があります。この「中間層」としての基地局を確立することで、場所を問わないシームレスな通信環境の提供を目指しています。

 この新構造は社会インフラに直結する大きな影響を及ぼします。2026年に予定されている国内プレ商用サービスでは、まず災害時のバックアップや地方の通信格差解消が期待されています。地上の設備に依存しない「空からの通信」は、有事の際の重要な生命線となり得るものです。

 今後は、次世代通信規格「6G」の重要な構成要素となる「非地上ネットワーク(NTN)」の核として、HAPSと衛星、地上局を統合した再設計が進む可能性があります。通信インフラの主戦場が地上から3次元空間まで広がる中、空を制する技術が次世代の産業競争力を左右する鍵となるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)