今回のニュースのポイント
江崎グリコは19日、気候変動に伴う猛暑が人間のエネルギー消費に与える影響についての研究成果を公表しました。2026年の夏も平年を上回る酷暑が見込まれるなか、暑さによる活動量の低下だけでなく、体温維持のための熱産生が減ることで、呼吸や内臓の働きに関わる「安静時エネルギー消費」そのものが低下し、身体が「省エネモード」に陥りやすくなる構造が明らかになりました。本稿では、激変する気候環境が日本人の代謝構造や生活様式を変容させ、新たなウェルネス市場や経済活動全般へ与える影響を構造的に読み解きます。
本文
地球規模での気候変動によって日本の猛暑が深刻化するなか、人間の身体そのものが環境変化への適応を迫られる新たな局面を迎えています。江崎グリコ株式会社は、気温が上昇する時期における太りにくい身体づくりの新たな視点として、日常生活の中で自然に消費される「安静時エネルギー消費」に着目した研究成果を公表しました。
気象庁の予報によれば、2026年の夏は平年以上の猛暑となる可能性が高く、最高気温40℃級の暑さを示す「酷暑日」という言葉も登場するなど、日本の夏は年々厳しさを増しています。こうした極端な気候環境のなかで浮き彫りになってきたのが、暑さによって人間の身体が「省エネ化」していくという現代型の構造変化です。今回の発表は、単なる季節性の健康管理やダイエットの話題にとどまらず、猛暑社会が日本人の身体活動や生活習慣、ひいては消費行動そのものを変容させていく構造転換の兆候を示していると言えます。
一般的に、夏は「汗をかくため消費エネルギーが増えて痩せやすい」というイメージを持たれがちですが、実態は全く逆の現象が起きています。猛暑が常態化する現代の夏においては、熱中症リスクへの配慮から外出を控え、運動機会が減少することで活動量そのものが著しく低下します。さらに重要なのは、気温が体温に近い環境下では、身体が自ら熱を生み出す必要性が少なくなるため、体内の熱産生が自然と抑制される点にあります。
この熱産生の低下は、呼吸や内臓の活動など、じっとしている間にも使われている生命活動を支える基礎的なエネルギー消費である安静時エネルギー消費の減少へと直結します。つまり、現代の猛暑社会における人間の身体は、外部環境の過酷な暑さに対応するために、自ら「燃えない」「動かない」という二重の節電モードを選択していると言えます。
この安静時エネルギー消費は、実は人間の1日の総エネルギー消費量のうち約6割という極めて大きな割合を占めている重要な要素です。どれだけ激しい運動をするかよりも、このベースの代謝をいかに維持するかが身体づくりの鍵を握っていますが、猛暑環境下ではこの巨大な基礎消費の枠組み自体が収縮してしまいます。1日あたり数十から100キロカロリー程度のわずかな消費の差であっても、それが日常的に積み重なることで消費バランスが崩れ、いわゆる「夏太り」のリスクが急激に高まることとなります。
さらに、現在の日本社会では、電子商取引(EC)や宅配サービスの普及、在宅勤務の定着、動画配信サービスの拡大といったデジタルインフラの進化が、猛暑による「外出しない生活」を物理的に支えてしまっています。すなわち、気候変動という環境要因と、快適な屋内生活を可能にする社会構造の双方が絡み合うことで、日本人の身体活動量は構造的に減少せざるを得ない環境が作り出されているのです。
このような「省エネ化する身体」という課題に対し、江崎グリコは安静時エネルギー消費を維持・向上させるためのアプローチとして、「筋肉」「座り姿勢を整えるシャキン!」「腸内細菌」という3つの要素を提示しています。特に、独自のビフィズス菌と食物繊維の一種であるイヌリンを4週間以上継続摂取したヒト試験において、安静時エネルギー消費量が1日あたり約84.4から101.8キロカロリー向上したという研究成果は、激しい運動を介さずに代謝をコントロールする新たな可能性を示しています。
これは、かつての健康市場が「ダイエットや美容、スポーツ」といった自己実現型の消費を中心としていたのに対し、現代のウェルネス市場が「睡眠、腸活、疲労回復、代謝維持」といった、過酷化する社会環境に適応するための「環境適応型の身体づくり」へとシフトしている潮流を裏付けるものです。猛暑という環境変化そのものが、新たな経済的需要とウェルネス産業を創出していると言えます。
酷暑が日常となる未来において、人間が無意識のうちに活動を回避し、消費を低下させる「省エネ化」に向かうことは、健康面だけの問題に留まりません。夏季における消費活動の停滞、外食やレジャー産業の構造変化、さらには酷暑による肉体的・精神的疲労がもたらす労働生産性の低下にいたるまで、マクロ経済全体に対して広範な影響を及ぼし始めています。
今回の江崎グリコによる研究は、単なる食品メーカーのヘルスケア提案を超え、猛暑社会においていかに人間の身体機能を維持し、経済活動の活力を担保するかという、これからの日本が直面する巨大なテーマを投げかけています。今後は、食事や腸内環境のマネジメント、日常のわずかな動作の見直しを含めた「省エネ化させないための身体インフラの再設計」が、持続可能な社会を維持するための極めて重要な生存戦略となっていきそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













