二酸化炭素から医農薬中間体を効率的に合成する技術を開発

2013年03月07日 10:12

 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)が、二酸化炭素とアミン化合物を原料として、医農薬の中間体として有用な2-オキサゾリジノン誘導体を、常温常圧のまま水中で合成できる技術を開発したと発表した。触媒の長寿命化を実現し、環境負荷の少ない化学品製造法として、数年後の実用化を目指すとのこと。

 地球上に豊富に存在し、地球温暖化物質としても知られる二酸化炭素。そのため、環境負荷の削減や製造コストの低減を実現する二酸化炭素を原料とした電子材料や医薬品などさまざまな化学品の製造技術の開発が求められていた。

 中間体とは、出発原料から何段階か経て最終生成物が製造される場合における、途中の段階の化合物のこと。中でも2-オキサゾリジノン誘導体は、抗生物質や医農薬の中間体として有用な化合物である。これまでの製造法では猛毒のホスゲンや一酸化炭素などを使うため、安全な製造法の開発が求められており、近時、二酸化炭素を用いた2-オキサゾリジノン誘導体の製造法がいくつか開発されていた。しかし、二酸化炭素は熱力学的に安定した化合物であるため活性化させることは容易ではなく、その化学変換には、通常、高温や高圧条件が必須となっている。最近報告された2-オキサゾリジノン誘導体の製造法でにおいても、高圧の二酸化炭素や超臨界二酸化炭素を使用するものであり、加圧や耐圧設備など投入エネルギー面での課題が残されていた。

 こうした中、今回開発された技術では、二酸化炭素とアミン化合物を原料とし、常温で圧力をかけずに医農薬中間体を合成することに成功。水中での反応を実現しており、有機溶媒を使わない医農薬中間体の新しい製造法に繋がるとともに、化学品製造時の環境負荷低減に貢献するものとなる。

 いかに二酸化炭素を排出しないか、ということばかりに注目が集まる昨今。二酸化炭素を原料とすることでこれに貢献するというのは、新しい視点と言えるであろう。こうした視点が広がり、より多くの分野で利用されるようになることを期待したい。(編集担当:井畑学)