今回のニュースのポイント
厚生労働省が7日に公表した「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合労働相談件数は119万8010件となり、18年連続で100万件を超える高い水準が続きました。民事上の個別労働関係紛争では「いじめ・嫌がらせ」が5万5614件と14年連続で最多となったほか、労働条件の引き下げに関する助言・指導申出が前年比10.6%増の1220件と最も多くなっています。人手不足に伴う人材獲得競争が激化するなか、企業には採用活動だけでなく、働き続けられる職場環境の整備が求められています。
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厚生労働省が発表した「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」は、深刻な労働力不足のなかにありながら、働く現場における労使間の摩擦が依然として根深く存在している現実を浮き彫りにしました。総合労働相談件数は119万8010件に上り、前年度比では微減となったものの、18年連続で100万件の節目を超える高い水準で高止まりしています。失業率が低水準で推移し、労働市場の需給が逼迫する雇用環境(売り手市場)にあっても、職場内の構造的な問題は解消されていないことを物語っています。
長年、労働問題といえば解雇や賃金未払いといった、雇用の維持そのものを脅かす雇用不安型のトラブルが中心とされてきました。しかし、現代の民事上の個別労働関係紛争における内訳を見ると、その中身は職場環境に関する問題へと比重を移しています。紛争の理由として「いじめ・嫌がらせ」が5万5614件に達し、14年連続で最多となっている事実がそれを象徴しています。働く人々にとっての関心は、単に雇ってもらえるかという生活基盤の確保から、職場の中でどのように働けるか、人格や尊厳が守られているかという、働く質の担保へと移りつつあります。
さらに注目すべきは、待遇面を巡る具体的な金銭・条件面の摩擦も浮上している点です。行政による助言・指導申出のなかで、最も多かったのが労働条件の引き下げに関するもので、1220件(前年比10.6%増)と二桁の伸びを記録しました。本日朝方の毎月勤労統計でも確認された名目賃金の上昇に伴い、労働者側における待遇改善や生活防衛の意識が急速に高まっています。その一方で、原材料費などのコスト増加に直面して収益確保に苦慮する企業側との間で、実際の就業規則の改定や給与体系の運用を巡る摩擦が表面化しやすい土壌が生まれています。
「深刻な人手不足であれば、企業は社員を囲い込むために今まで以上に大切に扱うはずだ」というマクロな一般論は、現実の職場のミクロな構造の前で一つの逆説を孕みます。人手が慢性的に不足している現場では、残された個々の従業員への業務負担(一人当たり労働量)が過重になりやすく、それが職場全体のストレスを引き上げる要因となります。こうした職場の余裕低下が、組織内のコミュニケーション不足や摩擦につながり、いじめ・嫌がらせの高止まりを生むという悪循環が生じています。人手不足そのものが、結果として職場環境に新たな負荷を与えている側面は無視できません。
こうした人口減少局面における企業の競争軸は、いかに新しい人を惹きつけるかという採用力の勝負から、入社した人材をいかに組織に定着させるかという「定着力」の勝負へと明確に変遷しています。どれほど多大なコストを投じて採用活動を展開しても、労働条件や環境への納得感が得られずに離職を招いてしまえば、企業の持続可能性は損なわれます。人手不足が深刻化する時代において、企業と働く人の関係は雇う側と雇われる側という単純な二元論ではなくなっています。労働相談件数の高止まりは、現場のマネジメントを単なる業務管理の次元から、働き手が安心して能力を発揮できる組織文化の醸成へとアップデートできるかという、企業への本質的な問いかけを内包しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













