再エネは「作る」から「地域で使う」へ 出光興産が挑む地産地消モデル

2026年07月02日 09:59

今回のニュースのポイント

出光興産は、高知県産の未利用木材を燃料とする木質バイオマス発電を活用し、創出された電力と環境価値を四国4県の系列サービスステーション「apollostation」30カ所へ供給する「地産地消モデル」の構築を順次開始しました。年間約465トンのCO2排出削減を見込む本取り組みは、単なる再生可能エネルギーの供給にとどまるものではありません。固定価格買取制度(FIT)から市場連動型のFIP制度への移行を背景に、地域内で生み出したエネルギーと付加価値を同じ地域経済圏で消費する試みであり、日本のグリーントランスフォーメーション(GX)が「発電量の拡大」から「地域価値の循環」へと新たなフェーズに進みつつあることを示しています。

本文
 出光興産が高知県のバイオマス発電電源を起点に始動させた再エネ供給モデルは、単一の拠点における温室効果ガス削減という枠組みを超え、エネルギーの供給側と消費側を地域資源の循環によって結び直す先進的な試みです。

 この仕組みでは、出光興産が50%出資する土佐グリーンパワー(高知市)が、県内森林の未利用木材を燃料にして発電を行います。生み出された再生可能エネルギー100%の電力は、非化石証書を組み合わせた電力メニューを通じて、四国4県で出光リテール販売が運営する「apollostation」30カ所へと順次供給されます。注目すべきは、電気そのものだけでなく「CO2を排出しない」という目に見えない付加価値、すなわち「環境価値」もセットで地域に留め、地域内で消費する点にあります。年間で想定される約465トンのCO2排出削減量は、スギ約3万3000本が1年間に吸収する量に匹敵し、その環境貢献度がデータとして明確に可視化されています。

 こうした地域経済圏に閉じた価値循環の後押しとなっているのが、エネルギー政策を巡る制度の移行です。土佐グリーンパワーの発電所は、2026年6月に従来のFIT制度からFIP(フィード・イン・プレミアム)制度へと移行しました。FIP制度は、発電した電力を市場で販売する仕組みであり、事業者が電力とともに環境価値を自らの戦略に基づいて柔軟に活用・提供できるという特徴を持っています。制度設計のアップデートが、事業者にただ電気を系統へ流す以上の裁量を与え、地域独自の地域循環型エネルギーモデルを生み出す土台として機能しています。

 エネルギー業界におけるこの取り組みの重要な側面は、GX政策が単なる環境対策から、地方創生を支える地域経済政策としての側面を強めつつある点にあります。これまでの日本の再エネビジネスは、メガソーラーの建設に代表されるように、発電設備を増やし、全体の総発電量を上積みするフローの議論が先行してきました。しかし、広大な土地や資金を持つ大手資本が地方で発電し、都市部への供給が中心となるケースも少なくありません。

 今回のモデルでは、地元の林業事業者から未利用木材を調達し、地元の発電所で雇用を生み、その電力を地域インフラであるサービスステーションで消費するという設計がなされており、地域経済の活性化や環境負荷の低減にも寄与するものとして期待されています。地域産業を支えるインフラとしての可能性を秘めていると言えます。

 こうした環境価値を媒介とした経済還元の広がりは、環境価値を経済価値へ転換する流れとも重なる、日本の産業界全体に共通する動きと言えます。企業や消費者は、もはや再エネを導入したという事実だけで満足する段階を過ぎつつあります。これからは、購入あるいは供給するエネルギーが、どの地域のどの産業(今回の場合は林業)に影響を与え、どのようなサプライチェーンの可視化をもたらしているかという、地域社会への波及が期待されるプロセスそのものが新たな評価軸、そして重要な差別化要因となっていきます。

 出光興産は今後、この四国での取り組みを起点として、保有・出資する全国の電源を活用した地産地消モデルの拡大を進めるほか、一般の地域事業者への供給展開も視野に入れています。エネルギー安全保障への懸念が根強い現代において、分散型の地域資源をベースにした自立的な経済循環をどれだけ構築できるかは、公的セクターのみならず民間企業の持続可能性を占う上でも極めて重要です。

 再エネビジネスの競争は、単なる作る量の多寡を競う時代から、電力や環境価値の提供を通じて地域へいかに多面的な価値をもたらす仕組みを構築できるかという、地域社会との伴走力を競う時代へと確実に移行していきそうであり、地域経済を支える新たな地域循環モデルとして注目されそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)