今回のニュースのポイント
政府は令和8年度税制改正で、海外通販など越境ECに関する消費税制度を見直します。これまで1万円以下の少額輸入貨物は原則として消費税が免除されてきましたが、海外EC市場の急拡大により国内事業者との競争条件の違いが課題となっていました。新制度では一定の海外販売事業者やプラットフォーム事業者に消費税の納税義務を求め、消費者の利便性を維持しながら公平な競争環境づくりを進めます。
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令和8年度税制改正に関連する改正法は2026年3月31日に成立し、同日に公布されました。近年、海外の販売事業者からインターネットを通じて直接商品を購入する「越境EC(電子商取引)」がスマートフォン決済の普及とともに急速に拡大しています。これまで、海外から配送される「1万円以下の少額の商品」については、税関での手続きを円滑にする目的などから消費税が免除される仕組みが維持されてきました。しかし、越境ECの利用規模が当時の想定を超えて拡大したため、現在の市場環境に合わせたルールの刷新が行われることになりました。
財務省がまとめたデータによると、令和6年の輸入許可件数は約1.9億件に達し、コロナ禍前の約4.1倍に急増しています。特に少額免税制度の対象となる1万円以下の貨物が全輸入許可件数の約9割を占めており、市場の拡大ぶりは顕著です。海外通販サイトを開くと、目を疑うような安さの商品が並んでいることがあります。こうした価格の安さは、海外企業による大量生産や物流効率化、独自の販売モデルなど複数の要因によって実現されています。その一方で、価格差を生む要素の一つとして税制度上の違いも指摘されてきました。制度が始まった当初は小口荷物の通関手続きにかかる事務負担を減らすという動機が主でしたが、誰もが気軽に世界中から少額の荷物を個別に寄せる現代の越境EC時代において、従来の少額免税枠が価格差に影響を与える構造的な要因の一つになっていたのです。
この状況は、日本国内で商品を販売し、消費税を納めて各種のコストを負担している国内の事業者から見れば、税負担の違いによる不公平感として映ります。ここでの問題の核心は、海外製品の品質や安さそのものではなく、「同じ国内市場で並んで販売される際のルール(競争条件)がそろっていない」という点にあります。広く公平に課税を行うという消費税の基本原則に基づき、政府は国内外の事業者が同じ条件で競い合える「イコール・フッティング(公平な競争環境)」を整える方針を明確に打ち出しました。
今回の見直しの大きなポイントは、毎日大量に届く小口荷物の一つひとつを税関でせき止め、購入した消費者から消費税を徴収するのは現実的ではない、という実務上の判断です。そこで新制度では、購入者ではなく、海外販売事業者や取引を仲介するプラットフォーム事業者に消費税の納税義務を求める仕組み(プラットフォーム課税制度)へと転換します。すでに同様の制度を先行して導入している豪州などの海外税制も参考にしながら、通関の混雑や遅延を抑え、適正に課税し、かつ利用者の利便性を損なわないという要素の両立を図っています。
では、一般の利用者への具体的な影響はどうなるのでしょうか。新制度の導入に伴い、一部の商品で価格が調整されたり、通販サイト上での価格表示が消費税込みの表記へと変更されたり、海外通販サービス側での手続き対応が変わる可能性はあります。ただし、これは「海外通販が制限されて使えなくなる」といった話ではありません。ネット通販という便利なライフラインをそのまま維持しながら、これまでルールの隙間になっていた部分を現在の市場規模に適合させるための健全化のプロセスです。
これまでのEC市場は、「より安く、より早く、より多くの商品」を届けるという、単純な利便性と価格の競争に終始してきました。しかし、これほど越境ECが人々の生活に根ざした現在、市場は安さだけの競争から、価格、安全性、そして今回の「ルールの公平性や信頼性」をも包括して競う次の段階へと移行しつつあります。いわば、EC市場がかつての成長期を過ぎ、名実ともに成熟した一産業になった証拠ともいえます。世界中の便利なサービスを賢く使いこなすためにも、消費者の側も価格の裏側にある「市場のルール」の変化を正しく見守っていく必要がありそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













