政府「パワーGX」年末策定へ 原油調達多角化、原発・AI電力対策を強化

2026年08月27日 08:51

首相官邸

政府は、エネルギー安全保障の強化やAI時代の電力需要への対応を盛り込んだ「パワーGX」を推進し、年末までに「パワーGX戦略」を取りまとめる方針を示した。写真は高市早苗首相(写真:首相官邸ホームページより)

今回のニュースのポイント

政府は、これまで進めてきたGX(グリーントランスフォーメーション)政策にエネルギー安全保障の強化やAI時代の電力需要への対応を加え、「パワーGX」として強化し、年末までに「パワーGX戦略」を取りまとめる方針を示しました。中東情勢を受けた緊急対応から一歩進め、原油・ナフサの調達多角化を促す仕組みの導入を検討するほか、安全性を大前提とした原子力の最大限活用や次世代革新炉、ペロブスカイト太陽電池などの導入を加速します。さらにAI時代の電力需要増加を見据え、発電向けタービンの供給力強化や、省エネ型半導体・光電融合技術を含む革新型データセンターの開発も推進します。高市首相は、次期国会への法案提出を含め実行可能な取り組みから着手するよう赤澤大臣に指示しました。

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 政府は、これまで進めてきたグリーントランスフォーメーション(GX)政策について、エネルギー安全保障の強化などを新たに位置付けた「パワーGX」へと発展させ、年末までに「パワーGX戦略」として取りまとめる方針を示しました。

 今回の政策方針の背景には、中東情勢を受けたエネルギー供給リスクへの対応があります。政府はこれまで「緊急時対応」として、世界に先駆けた石油備蓄の放出決定、ホルムズ海峡を経由しない原油・石油製品の代替調達、国内で生じた石油製品の供給障害(目詰まり)の解消などに着手してきました。高市首相によると、自動車整備工場の潤滑油、工務店のシンナー、農業用資材や燃料、食品販売店の包装容器、医療用手袋などに関する政府への相談は劇的に減少し、収束に向かっているとしています。そのうえで政府は、エネルギーを巡る国際構造が根本から変化したと認識し、緊急対応にとどまらず国内のエネルギー需給構造そのものを強靭化する方針へ舵を切りました。

 新たに打ち出された「パワーGX」の第一の柱が、「化石燃料の調達先の多角化・リスク低減」です。具体策として、原油やナフサの調達多角化に取り組む事業者へのインセンティブ付与の仕組みについて導入を検討するほか、ナフサや川中製品を含む石油関連製品の供給体制を強化します。脱炭素を進めて化石燃料への依存度を下げていく一方で、当面は不可欠となる原油や石油製品の調達先を分散し、供給途絶リスクを低減させる狙いがあります。

 第二の柱は、「化石燃料依存度の低減」の加速です。安全性を大前提とした原子力の最大限の活用を進めてエネルギー価格の抑制につなげるとともに、「次世代革新炉の早期導入」に向けて国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の機能を抜本的に強化します。また、日本発の技術で国内原料調達が可能なペロブスカイト太陽電池や次世代地熱発電など、国産の脱炭素電源や化石代替燃料の導入・開発についても、これまでの「分野別投資戦略」を見直して推進速度を引き上げます。

 さらに、今回の「パワーGX」で特筆されるのが、「AI時代の電力需要増加」への対応が明記された点です。政府が「AI時代の電力需要増加」への対応を課題に位置付けるなか、具体策として「発電向けタービンの供給力強化」を図るほか、「光電融合技術」や「省エネ型半導体」を含む革新型データセンターの開発を加速させます。

 この取り組みは国内にとどまりません。政府は、日本を産油国とアジア諸国の結節点と位置付け、すでに始動した「パワー・アジア」を通じて、サプライチェーンでつながるアジアの同志国のエネルギー需給強靱化を加速する方針です。

 今後の進め方について高市首相は、赤澤大臣に対し、本日取りまとめたパッケージについて「次の国会への法律案の提出」を含め、実行に移すことのできる取り組みから速やかに着手するよう指示しました。また、施策の多くを「日本成長戦略」の戦略17分野の一つである「資源・エネルギー安全保障、GX」に位置付け、官民ロードマップの下で民間の国内投資を引き出す考えを示しています。

 中東情勢に伴う緊急対応を経て、政府はエネルギー供給を巡るリスクを一時的な危機ではなく「構造的変化」と捉え、従来のGX政策にエネルギー安全保障とAI時代の電力確保という現実的な課題を組み込みました。今回示された方向性が、年末に取りまとめられる「パワーGX戦略」において具体的な支援制度や投資規模、法改正へどこまで落とし込まれるかが今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)