重工・電線が最高益相次ぐ AI時代支えるインフラ需要拡大

2026年05月13日 07:23

画・災害による停電を経験4割超。エネルギーミックスで安定供給を。

三菱重工、川崎重工、住友電工、古河電工が最高益更新。生成AI向けデータセンター増設で電力・通信インフラ需要が急拡大

今回のニュースのポイント

2026年3月期決算では、三菱重工、川崎重工、古河電工、住友電工など、かつて「重厚長大」と呼ばれた企業群で最高益級の決算が相次ぎました。背景にあるのは、生成AI向けデータセンター増設に伴う電力・通信インフラ需要の急拡大です。市場では今、「AI=半導体」だけでなく、その裏側を支える“電力・光通信・放熱・送電”関連企業へ注目が広がっています。

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 生成AIの普及は、社会のあり方を変えるだけでなく、エネルギー消費の構造を根底から塗り替えようとしています。生成AIの学習や推論には従来の数倍から数十倍の電力を要するとされ、新設されるデータセンターは一つで地方都市並みの電力を消費する巨大な電力需要家となっています。

 この潮流を追い風としているのが重工業界です。三菱重工業の2026年3月期決算は、売上収益4兆9,741億円、事業利益4,322億円、親会社の所有者に帰属する当期利益3,321億円と、主要な利益項目で過去最高を記録しました。ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)を中心としたエナジー部門が収益を牽引しており、世界的な電力不足を背景に高効率な発電設備への引き合いが強まっています。川崎重工業も同様に、エネルギーソリューション&マリン事業においてLNG運搬船や分散型電源の需要を取り込み、同セグメントの事業利益は550億円規模に拡大しました。この結果、同社全体の事業利益も1,451億円と過去最高を更新しています。三菱重工、住友電工、古河電工、川崎重工の4社はいずれも、事業利益や純利益において過去最高水準を記録、あるいは更新しており、重厚長大企業の収益構造が大きく変化したことを裏付けています。

 発電された電気を運び、膨大なデータを処理するためには、強靭な送電網と超高速の光通信網という「動脈」が不可欠です。ここで主役となっているのが電線大手です。住友電工の2026年3月期は、売上高5兆1,101億円、営業利益4,181億円、純利益3,695億円といずれも過去最高を更新しました。特にデータセンター向けの光配線や、高速光通信用チップに不可欠なInP(インジウムリン)基板を含む情報通信事業の営業利益が、前期比で約3.9倍に急成長しています。古河電工もまた、北米のデータセンター需要を背景に光ファイバや高密度な光コネクタ、光源となるDFBレーザーなどが伸長し、大幅な増益を達成しました。両社は電力ケーブルによるエネルギー伝送と光ファイバによる情報伝送の両輪で、AIインフラの根幹を支えています。

 さらに、AIの進化は周辺デバイスや材料のスペックにも極限の進化を求めています。ロームはデータセンターの省電力化に寄与するSiC(炭化ケイ素)パワー半導体などの電力制御デバイスでニーズを取り込みつつあり、ダイヘンも受変電設備や変圧器などの電力機器で、中長期的な成長への期待を高めています。演算装置の高性能化に伴う発熱問題も新たな商機を生んでいます。

 富士フイルムは半導体製造工程に用いるフォトレジスト等の電子材料に加え、放熱・絶縁フィルムなどの高機能材料を成長領域として位置付けています。旭化成もリチウムイオン電池セパレータや半導体材料が堅調に推移し、素材供給網の要所を固めています。パナソニックもまた、データセンターや工場向けの省エネソリューションや配電盤といった電力マネジメント事業を強化しており、インフラ需要を取り込む姿勢を鮮明にしています。

 かつて日本経済を支えた重厚長大企業が、デジタル社会の最先端であるAIの「物理的な土台」として再定義されています。生成AIというソフトウェアの波は、今や電力、送電、光通信、素材という実体経済を巻き込んだインフラ投資拡大へと発展しました。日本企業が得意としてきた精密なものづくりと大規模インフラの構築能力が、ようやく世界の投資テーマと合致し始めたと言えるでしょう。AIサーバーへ電気を送り、チップを動かし、熱を逃がし、データを光で飛ばす。このサプライチェーンにおいて、日本の重工・電線・素材メーカーは、AI時代の持続可能性を握る存在感を高めています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)