今回のニュースのポイント
次世代SiC MOSFETを市場投入:ロームは、独自の構造をさらに進化させた最新の第4世代SiC MOSFETを発表しました。業界でも低い水準のオン抵抗を実現し、電力変換時の損失を大幅に抑えます。
スイッチング損失を約50%低減:従来の第3世代SiC MOSFETに比べ、スイッチング時の電力ロスを約50%低減。従来のシリコン(Si)半導体に比べても大幅な損失低減を可能にしています。
NEDOプロジェクトの技術目標を2年前倒しで達成したと発表:NEDOの「8インチ次世代SiC MOSFETの開発」において掲げられた「電力損失50%以上の低減」と「低コスト化」という技術目標を、当初計画より2年前倒しで達成したとしています。
AI・EV時代のエネルギー効率を支える:急増するデータセンターの電力需要やEV市場の拡大を背景に、高電圧・大電力分野の効率化を支える中核技術として、8インチウエハ対応ラインによる量産体制の本格化を進めています。
電力をいかに効率よく使うかが、今や企業の収益性のみならず、国家レベルの産業競争力を左右する重要なテーマとなっています。ロームが発表した次世代SiC(シリコンカーバイド)MOSFETは、現代社会が直面するエネルギー問題に対し、半導体レベルで効率向上の可能性を示すものです。
ロームが積み上げてきたSiC技術の結晶である最新の第4世代デバイスは、独自のダブルトレンチ構造を進化させることで、オン抵抗を自社の第3世代比で約40%削減し、スイッチング損失を約50%低減することに成功しました。ロームの評価によれば、車載トラクションインバータに導入した場合、従来のシリコンベースのインバータと比べて、EVの電力消費を推定で約6%改善できるとされています。
この技術が切実に求められる背景には、世界的な電力需給の逼迫があります。AIの爆発的な普及に伴うデータセンターの消費電力増、自動車の急速なEV化、そして再エネへの移行。電力不足やコスト上昇、脱炭素といった課題に対し、同じサービスをより少ない電気で提供する「変換効率の向上」こそが、有効なエネルギー対策の一つとなります。
本質的な構造として、現代の電力問題は「供給(燃料調達や送電)」「消費(機器の増大)」に、この「効率(半導体によるロス削減)」を加えた三位一体で捉える必要があります。例えば、地政学リスクによるエネルギー供給不安(供給)や、巨大な電力食いとなるAIサーバー(消費)に対し、SiC半導体というインフラの“関所”を高度化することで、系統全体のエネルギー損失を最小化し、供給網の脆弱性を補完する役割を担います。
この影響は産業全体に波及します。EVにおいては航続距離の伸長やバッテリーの小型化を可能にし、データセンターでは電源効率の向上とともに発熱を抑え、冷却用の電力をも削減します。また、再エネ設備においても、発電した電気をロスなく送電網へ流すための不可欠な技術となります。
今後は、8インチウエハ対応の製造ライン立ち上げによる量産体制の本格化が進み、低コスト化がさらに加速するでしょう。WolfspeedやInfineonといった海外勢との競争が激化する中、ロームの次世代技術は「半導体はもはや計算だけでなく、エネルギーそのものを制御する基幹技術である」という新たな方向性を象徴しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













