年間1,000トンの日本酒の副産物が牛の飼料へ 白鶴が地域循環モデルを構築

2026年09月26日 10:18

白鶴外観 (1)

白鶴酒造。清酒のろ過工程で発生する処理後活性炭を牛の飼料「サケ炭」として再資源化し、畜産、堆肥化、酒米栽培を経て再び酒造りへつなげる地域循環モデルを進めている。(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

白鶴酒造は、清酒のろ過工程で発生する処理後活性炭を飼料「サケ炭(すみ)」として再資源化し、畜産、堆肥化、酒米栽培を経て再び酒造りへとつなげる「農醸連携」の地域循環モデルを構築しています。全国の清酒製造業から発生する処理後活性炭は少なくとも年間1000トン(白鶴調べ)と推定され、その多くが処分費用を伴う産業廃棄物となっていました。白鶴酒造はこの副産物を畜産飼料へ転換し、2026年9月1日時点で灘五郷内の清酒製造会社4社や兵庫県内の飼料会社1社が参画する取り組みへと広げています。

本文
 清酒の醸造過程で発生し、処分費用をかけて廃棄されていた副産物が、牛の飼料や肥料を経て再び酒米の栽培へと戻ってくる。白鶴酒造が推進する「サケ炭アップサイクルモデル」は、単なる企業単体の廃棄物削減にとどまらず、酒造業、畜産業、農業という異なる産業を地域内で一連の循環構造として結びつける試みです。

 清酒の製造過程では、味や香りを整えるろ過処理の際に活性炭が使用されます。役目を終えた「処理後活性炭」は、全国の清酒製造業者から少なくとも年間1000トン発生していると白鶴酒造は推計しており、その大半は産業廃棄物として費用を払って処分されてきました。

 同社ではこの処理後活性炭を堆肥化していましたが、さらなる有効活用を目指し、兵庫県内の飼料会社や畜産農家との共同研究を経て2022年に飼料「サケ炭」を開発、2025年7月に特許を取得しました。白鶴酒造の研究成果および説明によると、サケ炭を給与された子牛は、その主成分である活性炭により腸の健康維持がサポートされるほか、牛の糞由来の悪臭を約9割低減する効果が確認されたとしています。また、「サケ炭」は活性炭単体と比較して安価であり、配合飼料価格の高騰や消臭対策コストに悩む畜産農家の負担軽減にも資すると同社は説明しています。

 この飼料の最大の特徴は、副産物が巡る「循環の輪」にあります。酒造りで生じた処理後活性炭を「サケ炭」へと加工して牛に与え、その牛糞を堆肥化して一部を自社の酒米の圃場(ほじょう)に施用する。そして収穫された酒米で再び清酒を醸造するという一連の流れが設計されています。

 2025年の特許取得以降、同社は自社での利用にとどまらず、近隣の酒蔵で発生する処理後活性炭についても飼料化の仲介を開始しました。2026年9月1日現在で、日本一の酒どころである灘五郷内の清酒製造会社4社、兵庫県内の飼料会社1社がこの取り組みに参画しています。さらに、サケ炭を給与された牛の糞から作られた堆肥の一部は、同社の自社農業法人である「白鶴ファーム」の酒米圃場で実際に使用されており、副産物を畜産・農業を経て再び酒造りへつなげる循環モデルを進めています。

 この複数の主体を結びつけた地域循環の仕組みは、サステナビリティに関する表彰制度「第9回SXアワード」において財務大臣賞を受賞しました。審査では、清酒製造業の廃棄物の削減だけでなく、異業種間の連携によって持続可能な価値を創出している点が評価されました。

 従来は金銭的負担を伴う処理対象であった醸造副産物を、地域産業の有用な資源へどう変えられるか。今後は、現在参画している4社などの取り組みがさらに地域全体へ広がり、年間1000トン以上とされる業界全体の処理後活性炭がどの程度実効性をもって再資源化されていくかが注視されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)