医療用接着剤が世界市場でも注力

2011年03月09日 11:00

 従来、手術後の切開創の閉鎖には縫合糸やステープラー(固定針)が使用されるのが主流だが、最近では切開創の傷痕を目立たなくすること及び感染を防止することを目的に、医療用接着剤をこれらの代わりに使用した最新施術が行われているという。また、医療用接着剤の世界市場は既に2009年で6億5千万ドルとなっており、今後の成長率は12%以上と言われているという。

 そのような中、三井化学は7日、手術の際に切開部を接着するのに用いる医療用接着剤を開発したと発表した。年内に製品化、販売する予定。同社は医療用接着剤で2015年に売上高約25億円、20年に80億から90億円を目指す方針だ。

 開発した医療用接着剤は、粘り気が強く傷口にたれ込みにくいため切開部の治癒のじゃまにならず、独自の触媒技術により炎症が起こりにくいとしている。また、同社独自の触媒技術を導入しているため、既存の接着剤に比べ副生物が少なく炎症が起こりにくいという特長もあるという。さらに、この接着剤の成分は医療分野で30年以上にわたり使用されており、安全性についても実証済みです。現在、北里大学医療衛生学部人工皮膚研究開発センター黒柳能光教授の下で有用性等の評価を実施して頂いており、成果につきましては、第10回日本再生医療学会総会(3月1日、京王プラザホテル)において報告がされた。

 同社グループでは、2011年度から始まる3か年の中期経営計画において、ヘルスケア領域を含む精密化学品事業を、景気変動を受けにくい「重点5事業」の一つに位置。今回開発した医療用接着剤をはじめ、今後も新製品の創出を通じ、広く社会に貢献するとともに、事業ポートフォリオの変革を進めていくという。

 また、小林製薬と京都大学発バイオベンチャー企業のビーエムジーは、2007年4月よりビーエムジーが独立行政法人科学技術振興機構の革新技術開発研究事業として支援を受けて研究開発している新しい医療用接着剤の製品化を、共同で進めることを発表している。

 両社はこの安全性・有効性が高い本医療用接着剤の早期薬事承認取得を目的に、数年後には臨床治験を開始する計画。薬事承認取得後はビーエムジーが製造を行い、小林製薬の医療機器部門にて国内独占販売を行うことで合意をしているという。