転換期を迎えているコンクリートプール

2010年12月06日 11:00

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約30年以上経過し、漏水していたコンクリート製プールを、FRPプールへとリニューアルした長崎県の波佐見町立南小学校プール。改修工法として、工事予算が少なくてすむフルリニューアル工法が採用されている。(写真提供:ヤマハ発動機)

 約30年と言われるコンクリートプールの耐久年数。高度経済成長時に増え続けたコンクリート製のスクールプールは、現在、改修を迫られている所が少なくないという。しかし、コンクリートプールはクラック(ひび割れ)が非常に直しにくく、大規模な工事を必要とするため、改修には多額の費用がかかってしまう。そんな中、各プールメーカーは、国内の多くのプールが改修を必要とする時期にさしかかっているこのタイミングをビジネスチャンスと捉え、耐久性、経済性、デザイン性などあらゆる角度から新しいプールの形を提案し始めているようだ。

 スクールプールからレジャー施設のプールまでを多く手掛けてきた住友軽金属<5738> グループの日本アルミでは、老朽化したコンクリートプールをステンレスで内張りすることにより耐震性を強化するというリニューアルを積極的に推進している。また、ステンレス製プールで国内随一の実績を誇るプールメーカーのOTTOでは、環境保全のため、再資源化することが可能な無塗装プールの販売を強化すると同時に、30年以上の実績を持つ「ミルタプール」の導入を積極的に展開。ヨーロッパを中心に50ヶ国以上において数千の導入実績のある「ミルタプール」は、紫外線に強く、水藻・バクテリアが付きにくい抗菌性の高い特殊コーティングを施したステンレス鋼パネル(側壁)により構成されたプールで、世界中で高く評価されている。

 また、過去の経験と先進技術を駆使し、新しいプールの価値を創造しようとしている企業がある。それが、30年以上も前からガラス繊維にポリエステル樹脂を染み込ませたFRP(Fiberglass Reinforced Plastic)素材を使ったプールを作り続けているヤマハ発動機<7272> だ。同社は、老朽化し危険度が増してきているコンクリートのプール施設などに対して、FRPプールへのリニューアルを積極的に呼びかけている。また、安全性や耐久性、改修工事の短期化によるコストパフォーマンスなど、FRPプールの優れたところをアピールすると同時に、リニューアルを通して、プールの有効的な利用法についての新しい提案も行っているという。その一例としては、東京都の芝公園において港区が管理・運営している多目的運動場「アクアフィールド芝公園」が挙げられる。同施設は、老朽化したコンクリート製プールをFRPプールへとリニューアルをした際、可動床機能を採用。これにより、プールを利用することができないシーズンには、可動床を上げることでフットサル場へと生まれ変わるという。このような例は増えてきており、1年通してプールを有効利用できる新たなモデルとして注目されている。

 近年、レジャーとしてだけではなく、健康増進のためのエクササイズとして、ストレス解消のためにリラクゼーションとして、さらには高齢者など運動機能が低下してきた人がリハビリテーションを行える医療施設としてなど、社会環境が変化するとともに、プールに求められるものも多様化してきている。日本経済もひとつの転換期を迎えている今、コンクリートプールもその役割を終え、時代や社会のニーズにも柔軟に対応でき、安全性、耐久性、経済性、そして環境にも配慮できる未来型プールへとシフトしていかなくてはならない時期に差しかかっているのかもしれない。