FRPプールのメリットと安全対策のスタンダード

2010年11月29日 11:00

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ヤマハ発動機のFRPプールでは、吸い込むパワーを分散し低減させることで、吸い込む圧力を抑えるなど、重大な事故を防ぐための徹底した安全対策が講じられている

 何故、プールにFRPが最良の材料と言われているのか

 FRP(Fiberglass Reinforced Plastic)とは、強化プラスチックとも呼ばれ、ガラス繊維にポリエステル樹脂を染み込ませ、何層にも積層して硬化させた繊維強化合成樹脂のこと。この素材と50年に亘って付き合ってきたのがヤマハ発動機<7272>だ。ヤマハのFRP技術の歴史はモーターボートの生産から始まっており、水との相性の良さは既にモーターボートを生産し始めた時点で分っていたということになる。現在では陸・空でも活躍する素材でもあるが、水との関わりがその原点であったからこそ、プール事業での成功が裏付けられていると言っても過言ではない。

 さて、そのFRPプールの特長は大きく分けて3つある。1つ目は優れた成形性をはじめとする素材の優秀さ。そして2つ目はハイコストパフォーマンス、3つ目が高い耐震性だ。まず、素材の優秀さだが、「軽くて強い」「優れた成形性」「優れた電気絶縁性」「安定した耐熱性能」などのメリットがあり、素材に最適であることを証明している。言い換えれば、重量制限の設置に対応し、自由なデザイン性を持ち、小から大まであらゆるロッドに応え、安全性の保持に貢献するなどのメリットを持っているということだ。

 次に、ハイコストパフォーマンスについてだが、こちらは「錆・ヒビ割れ・薬品などによる腐食に強く、ゲルコート(ポリエステル樹脂に顔料を混ぜたもの)表面塗装が、紫外線などの環境に強い耐久性を発揮すること」、「一体化された表面塗装により、剥離発生を抑えること」、「各ユニットに施されたFRP接合によって水漏れがないこと」、「FRPと補強材が作る剛性バランスが振動・水圧など様々な外圧からプールを守ること」と、これらにより、長期間の品質保持が可能になり、設置後のランニングコストを大幅に軽減することができることが証明されている。

 そして、建造物に必ず高いパフォーマンスが求められる「耐震性」だが、例えば、平成7年に起きた阪神淡路大震災では、被害調査によると、地域71箇所の設置数に対して、地盤の消失による破損など間接的な原因による被害が5箇所発生したのみだった。このような実例でも、ヤマハのFRPプールは強い耐震性能を実証している。

 これらの背景をもとに考えると、FRPという素材は非常に優秀で、プール素材に最適であるということが理解できる。ヤマハ発動機の調査によると、2009年度のFRPプールの設置割合は競合する他の素材と比べても、52%の設置率を示しており、プール素材のスタンダードになりつつあると言えるだろう。また、同調査でFRPのシェアは同社が90%を誇りその第一人者となっていることからも、同社が数十年も前に導き出した、プール素材としてFRPを利用するという方向性は間違いではなかったということになる。

 プールの安全対策・衛生管理のスタンダードとは

 2006年に起きた女児のプール吸い込み死亡事故は当時、ニュースでも多く取り上げられ、多くの人々にプールの安全性を認識させるきっかけとなったのは記憶に新しい。この件に限らず毎年プールでは事故が起きており、その安全対策はどのように取られているのか気になる所である。

 プールにおける3大事故は「溺水」、「飛び込み」、「吸い込み」と言われており、「溺水」と「飛び込み」は施設管理者や現場監視員等による管理手法や管理組織によるソフトウェア面への依存度が高いが、「吸い込み」においては排水口の適切な仕様のハードウェア採用が重要になってくる。ヤマハ発動機はそのハードウェア部門においてもいち早く取り組み、今やその対策はひとつのスタンダードとなっていると言えるだろう。

 現在、文部科学省、国土交通省が2007年に策定した「プールの安全標準指針」を満たす排水口として同社が採用しているのは、スクールプールにおいては、独自のフロアー吸入方式だ。これは吸い込むパワーを分散し、低減させることで、吸い込む圧力を抑えてあるため、安全性が確実に確保されるというもの。さらに人や物で排水目皿を塞ぎにくくするためにL字型の形状にするなどの対策も用いている。そして、流水プールにおいては、吸水口を分散化し、1ヶ所あたりの吸い込み速度を小さくする循環フローシステムを採用。体の一部や髪の毛が吸い付く事を防ぎ、重大な事故が起きないように安全対策を施している。

 さらに同社は、ソフトウェア面の依存度が高い、「溺水」、「飛び込み」事故においても、適切な監視員の配置や応急措置などのマニュアル作成協力などのソフトウェア面と共に、ハードウェア面からもサポートをしている。例えば、飛び込み事故防止としては測定機による実験でFRPの衝撃吸収力の高さを数値化し、客観データとして提供する、などだ。また、プール回りの滑り防止設計やプール内に突起物がない仕様を用意するなど、他の考えられる事故を未然に防ぐための準備も怠らない。このように積極的な安全対策に取り組む姿勢はヤマハFRPプールのもうひとつの大きな特徴となっている。
(編集担当:加藤隆文)