村田製作所 電界結合型ワイヤレス伝送システムを開発

2010年07月05日 11:00

k100703_005_2

電磁誘導方式よりも位置自由度が高く、高効率な電界結合方式を採用した、村田製作所のワイヤレス電力伝送システム

 株式会社村田製作所 は、ワイヤレスで電力を供給できる電界結合方式の電力伝送システムを、TMMS社と共同で開発したと発表した。

 これは、電極間に発生する電界を利用してワイヤレスで電力を伝送する新しい技術で、
携帯電話やノートPCなどの機器を、充電台に置くだけで充電できるもの。京都の技術ベンチャー・TMMS社の電力伝送技術を組み合わせ、システムを構築した。

 これまでにも、電動歯ブラシや電動シェーバーにみられるような、電磁誘導方式の非接点充電器の開発と製品化が進められてきたが、今回開発された電界結合方式は、伝送効率が約70%と電磁誘導方式に比べて高効率でエネルギーのロスが少ない。もっとも大きな特長は、充電ポイントを気にせず充電台にポンと置くだけで充電が可能なことだ。さらに、動くものにも給電でき用途が広がる。また、電気を通す素材であれば、透明な樹脂など、材質を選ばず、形状も自由に充電システムを様々な形やデザインで作りこめる。インテリアや装飾品にも活用できそうだ。端子が外部に露出していないので、水まわりなど防水が気になるところでも安全に使える。

 気になる点としては、まず充電時間が上げられるが、こちらは通常のケーブル式充電器の充電時間と同等とのこと。次に、受電モジュールをどこに組み込むかという問題だ。受電モジュールは、機器に外付けする方式と機器の中に組み込む方式があるが、システムの利便性や特性を最大限に活かそうとすれば、機器の中に組み込んでしまうことが望ましい。村田製作所としては、機器内部に組み込むように提案していくとともに、送電・充電モジュールの小型化も目指すという。

 このシステムを用いれば、オフィスのデスクや、マクドナルドやスターバックスといった飲食店舗のテーブル、新幹線のトレーなどを充電台にすることで、複数のモバイル機器をケーブルレスで充電しながら利用できる「スマートデスク」が登場することも。交通機関や宿泊施設、公共施設で普及すれば、外出や旅行でバッテリやACアダプタ、電源コードなどを持ち運ぶ必要もなくなる。また、今後、家庭や建築物にもこのシステムが応用されれば、家電製品をコンセントにつながない、コンセントレスのライフスタイルも期待できるだろう。

 村田製作所では、まず玩具市場向けに商品化し、2010年秋には量産をスタートさせる。3W以下の小規模のものから、2013年度を目処に20W以上の大きな電力用のモデル、さらには超小型化品の開発、量産へと段階的に事業を拡大していく方針だ。
(編集担当:藤原伊織)