全国に200万人以上いるとされる糖尿病患者をはじめ、食事療法が必要な病気を抱える人々にとって、カロリー制限は大きなストレスになっている。焼き肉やラーメン、から揚げなど、普段から何気なく高カロリーの料理を口にする現代の食生活にあって、限られた摂取カロリーの中で幸福感を得ることは困難だ。中でも、砂糖や乳製品を多く使用する甘味類は食べたくても食べられない食品のひとつ。そんな中、従来品の約半分、バナナ1本とほぼ同じ80kcalを実現したことで、カロリーに気を使う人々から絶賛されているアイスがある。
江崎グリコ <2206> が販売する「カロリーコントロールアイス」は、砂糖を一切使用せず、乳製品の使用を極限まで抑えることで、これまでにない低カロリーを実現した画期的なアイス。この商品は、東京医科大学八王子医療センターからの「糖尿病の患者をはじめ、カロリー摂取に配慮している人でも安心して食べられるアイスを作って欲しい」という依頼を受け、江崎グリコが開発・商品化したものだ。約2年の研究の末、2003年6月に発売した同商品は、首都圏にある病院内の売店を中心としたニッチな市場で販売を開始。しかし、「20年ぶりにアイスを食べました」という喜びの声が現すように、これまでアイスを食べることができなかった人々が持つ、強く、深いニーズに応えたことで高い評価を得た。
それだけでも大きな成果ではあるが、しばらくすると思いがけない評判が立つ。元々ターゲットとして想定していなかった一般の層、中でも医療関係者や栄養士といった”健康のプロ”が、カロリーが低いことを気に入って日常的に口にしているという。「カロリーが気になる人でも食べられる」という社会的な意義を持っていたとしても、企業としてひとつの商品を維持していくためにある程度の販売ボリュームが必要なことは明白だ。計らずとも巻き起こった嬉しい誤算が、「カロリーコントロールアイス」の命運を左右する大きな出来事となった。
これを機に江崎グリコは全国展開を本格化。2005年にはローソンなど大手コンビニチェーンへと販路を拡大し、一般層の人々が気軽に手に取れる状況を整えていった。年々高まっていく健康志向とここ数年の「メタボ対策」ブームによって、「低カロリー」というフレーズが、言わば食生活に関する旗印となっている昨今。20~30代の女性や30~40代の男性を中心に”80kcalのアイス”として定着しつつある。「カロリーコントロールアイス」は、同社の創業以来の理念である「おいしさと健康」という言葉に適った画期的な商品なのだ。
(編集担当:上地智)