近年、急速な普及を遂げ、大きな注目を集めている「RFID」。その名称に馴染みは薄くても、改札にかざすだけで通れる定期券や、おサイフケータイなどの自動決済に使われている技術といえば、お分かり頂けるだろうか。
RFIDとは、無線通信技術を用いてID情報の認識をする製品や技術全般をさす。数ミリから数センチ程度の大きさの「タグ」にデータを記憶させ、「リーダ・ライタ」と呼ばれる端末でその情報を読み取り、商品などをデータ管理する。分かりやすく言えば、IT化の進んだバーコード。ただし、印刷されたバーコードと決定的に違う点は「データの書き換えができる」こと、そして「複数のタグを同時に読み取り、個別に管理が可能」ということだ。
当初は流通業界を中心に研究が進められてきた技術だが、流通だけに限らずあらゆる業界において、IT化、自動化、省力化を図る上で欠かせない技術として、様々な生活シーンに広がりつつある。例えば、農産物にRFIDをつけた場合、在庫管理はもちろんのこと、出荷から店頭までの流通経路のトレーサビリティが向上する。また、店頭に陳列された製品の情報を一度に読み取ることができるため、消費者の購買動向の調査や分析など、マーケティングの効率化にも有効だ。消費者の立場からも、流通経路や使用されている農薬や肥料、生産者の情報が入手できるので、食の安全を確認出来るという大きなメリットがある。また、社員証や学生証に導入した場合、個人認証が自動化でき、セキュリティの向上や災害時の居場所確認などにも役立つ。もちろん、食事や買い物での自動決済に使用することもできる。他にも、身近な使用としては、クリーニング品の追跡やユニフォームの管理、建築資材等の情報管理、ペットタグなど、あらゆるシーンで、すでにRFIDは活用されはじめている。
中でも、とりわけ注目したいのが、国内企業としては村田製作所 <6981> などが早くから開発を進めているUHF帯を使用したRFIDだ。RFIDの無線に使用する周波数は、指向性の高いHF帯と、通信距離が長いUHF帯の2つに分けられる。HF帯は接触、もしくは数ミリ程度の近距離でデータを読み取るのに適している。現在、日本国内ではこのHF帯が主流だが、これは、ICカードが用いられた定期券や携帯電話等のICチップによる決済システムが先行して普及したことが大きい。
一方、UHF帯のRFIDは小さなアンテナでも数メートル離れた場所から、最大で一秒間に数百個単位もの製品の情報を一括して読み取ることが出来る。例えば在庫商品の管理も、製品を一個一個読み取らなくても少し離れた所からリーダ・ライタの端末をかざすだけで一度に読み取れるのだから、作業効率が格段にアップする。
上記のような利点があるUHF帯のRFIDだが、通信距離が長くなる代償として周囲の金属体等による反射や妨害波が増えるため、使いこなすのが難しいという課題がある。その点、ムラタは携帯電話で実績のある無線通信技術を活用して、タグとリーダ・ライタを一括して開発することにより、使い勝手の良いRFIDソリューションを提供する構えだ。すでに実用化されているものでは、これまで読み取りが難しかった金属製品に直接貼り付けることができる「金属対応タグ」などがあり、実際にガスボンベの管理等で使用され始めている。他にも電子機器のPCB基板にリフローはんだで実装するものが実用化されている。
今後、UHF帯のRFIDが普及していけば、人々の生活はもっと便利に、そして効率的に変化していくことだろう。
(編集担当:藤原伊織)