新型ゴルフは古き良き時代への回帰の兆しか?

2013年05月23日 20:05

 1974年の発売開始以来、6世代39年間の長きにわたり2900万台以上が生産されている世界的なベストセラー。日本国内でも四半世紀、25年に渡って輸入車のカテゴリーの中で売れ行きナンバーワンを続けている。それがフォルクスワーゲン・ゴルフだ。

 ゴルフは筆者にとって、思い出深いクルマの一台である。78年、筆者が大学生時代に、お金持ちのお坊ちゃんだった友人が初代の赤いゴルフ(もちろん新車)を持っていて、本当によく運転させてもらった。21世紀の現代のゴルフからは信じられないほど小さく華奢でシンプルで、そう、極めて簡素な作りだった。それでも、低いスピードで運転していても楽しかったし、パワーも決して高くはなかったので、箱根の峠などは本当に苦しそうに馬力を振り絞って上っていくという感じだったけれども、やはりとても楽しかったことを覚えている。豪華な装備は何ひとつ付いていなかったけれど、何の不足も感じなかった。必要にして充分だったのだ。

 あれから35年。時は流れ、ゴルフは初代から数えて7代目となり、4年ぶりとなるフルモデルチェンジをうけ、6月25日から国内でも発売される。

 この新型ゴルフは、フォルクスワーゲンの新しいモジュール戦略「MQB」のもとに開発された初めてのモデル。エンジンやボディ、サスペンションだけでなく、エアコンやインフォテイメントシステムにいたるまで新世代モジュールとしてゼロから開発したという。歴代ゴルフ最高となる21キロ/L(JCO8モード)の低燃費を誇り、全モデルが100%のエコカー減税対象車となっている。安全性においても9つのエアバッグに加えて、プリクラッシュブレーキシステム “Front Assist Plus”を標準で搭載し、その他数々の予防安全装備を全車に標準装備している。価格は「TSIトレンドライン」が249万円、「TSIコンフォートライン」が269万円、そして「TSIハイライン」が299万円となっている(全て税込み)。
 
 しかし、筆者にとって、そしてたぶん現在50代半ば以上の世代にとって、こうしたスペック以上に重要なのは、わずかだが新型のゴルフには原点回帰への兆しと思われる箇所が見られることだ。まずは、100キロを越える車重の軽量化。これはとても素晴らしいことだ。それから排気量も先代から始まっていることだが、ほぼ初代と同じレベルまでダウンサイジングしている。一時期の大排気量時代の実に半分以下だ。そしてなによりもそのフロントマスクそしてボディデザインが、代を重ねるごとにゴルフらしからぬ装飾性が増していった先代までとは違い、新型ではゴルフ本来の魅力である、いわばシンプル&クリーンともいえるスタイルに戻っている。こうした細部を見ていくと、気の早い話ではあるが、次世代、8代目のゴルフがより原点回帰を明確にしていくのではないかと期待してしまう。しかし、そんな8代目を待つよりもこの新型ゴルフを味わい尽くすことが、まずは先決だろう。(編集担当:久保田雄城)