国民から選ばれた裁判員が殺人など重大な刑事事件裁判に参加して、裁判官と一緒に有罪・無罪や量刑を決める「裁判員制度」がスタートしたが、この制度についての内閣府の世論調査で、97.4%の人が裁判員制度を「知っている」と制度への認知度の高いことがわかった。一方で、裁判員候補者に選ばれた場合、裁判所に行くことが法律により義務付けられているが「行くかどうか」には4人に1人(25.9%)が「義務だとしても行くつもりはない」との反応を示した。
行きたくない理由として「有罪・無罪などの判断がむずかしそう」「自分の判断が被告人の運命に影響するため荷が重い」と言う回答がそれぞれ46.2%と高く、「裁判の仕組みがわからない」(34.6%)というものや「専門家の裁判官に向かって意見を言える自信がない」(34.0%)という回答も多かった。
性別では男性より女性の方が理由としてあげた比率が高かったのは「有罪・無罪などの判断がむずかしそう」(男性の40.4%に比べ、女性は50.7%)「裁判の仕組みがわからない」(男性25.9%、女性41.1%)「専門家の裁判官に向かって意見を言える自信がない」(男性28.1%、女性38.5%)のほか、「家族の世話や介護ができなくなる」(男性3.5%、女性13.8%)など、家族の中で女性に介護などの負担が多くかかっていることを窺わせている。逆に、「仕事が休めない」を理由にあげたのは男性が29.4%(女性17.8%)と圧倒的に女性より多く、家庭は女性、仕事は男性という旧来からの日本の伝統的な価値観のようなものも見え隠れしている。
この調査は今年5月28日から6月7日までの間に調査員の個別面接聴取方式で、全国の20歳以上の男女3000人を対象に実施され、2054人から有効回答を得ていた。
その結果、裁判員候補者に選ばれたら「義務であるか否かにかかわらず(裁判所に)行きたいと思う」と答えた人は13.6%、「義務であるから、なるべく行かなければならないと思う」と答えた人は57.9%と71.5%の人は肯定的に、裁判所へ行く選択をしていた。
一方、より参加意識を高めるために国はどうするべきか、では「裁判をよりわかりやすくする」をあげた人が62.5%「仕事のある人でも裁判に参加しやすくするための環境を整える」が59.3%「学校での教育」が45.2%「育児や介護のある人でも裁判に参加しやすくするための環境を整える」が43.8%とハード、ソフトの両面でのサポート体制が求められていた。
なお、調査項目では裁判員制度の仕組みにについても、主なものをあげ、認知度を確認していた。仕組みの主なものは(1)20歳以上の国民は原則として、誰でも裁判員に選ばれる可能性がある(2)1年間で裁判員に選ばれるのは20歳以上の国民の5000人に1人くらいである(3)裁判員は裁判員だけで裁判をするのでなく、専門家の裁判官と一緒に裁判をする(4)裁判員には法律の知識はいらない(5)裁判員には日当(1日1万円以内)や交通費が支給される(6)約7割の裁判は3日以内に終わると見込まれる(7)健康上の理由、重要な仕事や用事、家族の介護・養育などのため裁判所に行くことが難しい人は裁判員に選ばれない(8)裁判員やその家族に危害が加えられるような事情がある事件は裁判員制度の対象とならない場合がある(9)裁判員の名前や住所などは公表されない、などを項目としてあげ、仕組みの周知にも役立てている。
(編集担当:福角忠夫)