人手不足の介護業界を救う次世代ロボット

2009年04月01日 11:00

 経済産業省の外郭団体である機械産業記念事業財団(TEPIA)は、次世代ロボットの導入がもたらす社会経済効果の試算を公表。期待される効果を、3つの分野に分けて試算している。

 その3つの分野とは、現役世代の労働参加を促進する「労働力分野」、担い手不足の問題に直面している産業の人員補助と代替促進をもたらす「産業分野」、高齢者の自立生活を支援する「社会保障分野」である。

 「労働力分野」では、家庭において家事や介護などの負担を次世代ロボットが軽減することにより創出される、ゆとり時間と労働力を試算。その結果、2025年には25歳~64歳までの世代においても1日当たり平均74分のゆとり時間が創出されると考えられる。また、「産業分野」の経済効果については、次世代ロボットが担うことができる業務(労働)の種類と量を労働力に換算。さらに、将来の労働力推計結果と照合することにより、次世代ロボットによる労働力補完・代替効果が試算された。

 なかでも高齢化により人手不足が問題となっている介護・福祉を主とする「社会保障分野」では、現在、研究開発が進められている各種の健康支援関連ロボットに関するリサーチをもとに、「生活習慣病の回避」、「介護予防」、「要介護状態の重度化回避」の3つの視点から次世代ロボットの役割を探索。実用化に向けた支援策を考査している。

 日本は現在、工場などで稼働する産業用ロボットが世界市場7割のシェア(市場占有率)を持ち、国内の市場規模は7000億円に成長。しかし、介護・福祉用に関してはメーカーや大学の開発段階にとどまっているのが現状だ。経済産業省は介護・福祉用ロボットが普及すれば、産業用を合わせたロボット産業の国内市場規模が2025年には6兆2000億円に拡大すると推定。メーカーに介護・福祉分野への技術移転を促す考えだ。

 経済産業省では、介護・福祉用ロボットの開発を促進するため、補助金制度を創設し、操縦による移動作業タイプ、自律による移動作業タイプ、人間装着タイプ、搭乗タイプに分類し、集中的に支援していく構えだ。さらに、ロボットの安全性や衛生面の基準作り、ロボットが公共地域などで動くための法整備も検討していくという。

 ロボットと人が共存する近未来型生活へ…。生きていく上で大切な「持ちつ持たれつ」の関係が、人対人ではなく、人対ロボットになる日も、そう遠くないかもしれない。