今年に入って地域の建設業者の倒産が相次いでいることから、国土交通省は地域の建設業の実情や金融機関の融資姿勢などを把握するための緊急実態調査を8月から9月にかけて実施。全国9ブロックの建設業協会や加盟会社、地元金融機関から情報を収集した。
その結果、業界を取り巻く経営環境は(1)建設投資の減少(2)ダンピング受注増加による価格競争の激化(3)金融機関の融資姿勢の厳格化(4)建設資材価格の高騰(5)不動産業の業況悪化によるデベロッパーとの連鎖倒産の懸念(6)建設労働者の労働条件の悪化と若年入職者の減少などが原因して、「かつてない厳しい状況におかれている」(国土交通省)ことが改めて浮き彫りになった。
このため、中小・中堅建設業者からは公共事業予算の確保、受注機会の確保を求める声が一段と強まっているほか、ダンピング対策の徹底、新分野への進出支援や専門家による経営相談の充実、早めの廃業ができるような手助けが求められていた。
このほか、金融機関に対しては、短期的な受注計画や手持ち工事量、財務状況などに対する過度な重視の是正や過去の工事実績、借入れの返済状況、現在の受注工事、継続工事に対する評価や配慮を求めている。
また、公共工事請負代金債権の流動化の促進や中小企業庁のセーフティネット保証制度の充実を求める声もあがっていた。
地方公共団体の入札契約制度に対しては、最低制限価格や低入札価格調査基準価格の引き上げ、予定価格の事前公表の取り止め、歩切りの禁止、適切な地域要件の設定などを求める声が強かった。
国土交通省では、地方公共団体に対して、今月12日に、前払い制度の適切な運用や支払い手続きの迅速化、予定価格の事前公表の取り止め、適切な競争参加条件の設定、最低制限価格・低入札価格調査基準価格の見直し、歩切りの禁止などを緊急要請していた。さらに、今後、金融庁などとの連携を深めて、資金調達の円滑化に取り組むとともに、公共工事請負代金債権の流動化の推進について、11月から地域建設業経営強化融資制度を実施する、としている。
民間信用調査会社・帝国データバンクの調べによると、今年上半期の建設業倒産は負債1000万円以上で1633件を数え、前年同期に比べ16%近く増えていた。地域の雇用に大きく貢献してきた地域有力建設業の倒産も相次いでおり、地域経済が疲弊している、としている。